大統領令により非友好国投資家の権利保証、ただし制限は残り、投資再開は不透明

(ロシア)

調査部欧州課

2025年07月14日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7月1日、外国からの投資を促進することを目的として、大統領令第436号「外国投資家の権利に対する追加的な保証について」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名し、即日発効した。非友好国(注1)出身の外国人を含む投資家向けに特別決済口座「In口座」が導入され、同口座を通じたロシア企業の有価証券の取引に対する保証が与えられた。

保証対象は外国人投資家による証券投資で、新規資金のロシアへの流入時に適用される。非友好国出身の投資家は、2022年と2023年にロシア大統領が対ロ経済制裁への対抗措置として導入した制限を受けることなく、ロシアへの投資やロシアからの資本引き揚げが可能となる。今回の大統領令に基づき、非友好国の投資家でも、新規の証券取引に際して事前に政府委員会の許可を得る必要はなくなった。その一方で、過去の取引については、特別決済口座「C口座」(注2)における非友好国出身の非居住者の証券や不動産などの資産の売却益などに対する凍結措置が引き続き適用されている。

ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は6月に開催されたサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(2025年6月24日記事参照)の場で、新たな投資を呼び込まなければならず、報復措置として現在課されている制限は新規の投資には適用されるべきではないと、外国からの新たな投資の必要性を指摘していた。「2023〜2024年の急成長の反動でロシア経済が冷え込み、景気後退に向かう可能性がある」と指摘する経済学者のエフゲニー・ナドルシン氏も、景気回復のカギは外国からの投資であり、投資は成長の再始動に不可欠だと話す(「フォーブス・ロシア」6月21日)。

ロシア側の期待どおりに外国からの投資を再び呼び込めるかどうかは不透明だ。西側諸国が課すロシア向け投資規制は、外国人投資家の行動に直接的な影響を及ぼしている。ロシアの投資会社BCSのアナリストであるダニイル・ボロツキフ氏は、現時点でロシアの株式市場への顕著な投資流入は期待されていないと指摘する(投資会社フィナム7月2日)。

(注1)欧米諸国や日本など、ロシア政府やロシアの個人、法人に対して非友好的行為を行う国・地域。連邦政府指示第430-r号(2022年3月5日付)で規定し、その後数度にわたって改定(追加)している。

(注2)非友好国からの融資・貸し付けへの返済、配当などの振り込み(月額1,000万ルーブルを超えるもの)などに利用目的を限定して使用される特別口座。

(欧州課)

(ロシア)

ビジネス短信 840f809e7f88ae32