週40時間労働の導入に向け中小企業、サービス産業への影響懸念
(メキシコ)
メキシコ発
2025年07月09日
メキシコ労働・社会保障省(STPS)は、週の労働時間の上限引き下げに当たって実施している「週40時間労働の導入に向けたフォーラム」の第3~5回をそれぞれ、ハリスコ州グアダラハラ市(6月27日)、バハカリフォルニア州ティファナ市(6月30日)、ケレタロ州(7月3日)で開催した。
第1、2回と同様、現行の週48時間から40時間への「段階的な移行」を強調したこと(2025年6月26日記事参照)に加え、中小企業やサービス産業界の課題も指摘した。ケレタロ州のマウリシオ・クリ・ゴンザレス知事は「最も影響を受けやすいのは、国内の雇用の7割を生み出す中小・零細企業だ。彼らを保護する必要がある」と述べた(「プラサ・デ・アルマス」7月4日付)。サービス産業については、バハカリフォルニア州の業界団体から、既にシフトが定型化しているレストランやホテルでのオペレーションが複雑化することへの懸念が表明された(「ラ・ポリティカ・オンライン」6月30日付)。さらに、第三次産業は他の産業と労働形態が異なることから、週40時間労働義務化の対象から外すべきと主張する声もある(「エル・エコノミスタ」紙7月4日付)。
全国小規模事業者商工会議所(CANACOPE)ケレタロ支部のエドゥアルド・ウリセス・チャベス・イダルゴ氏は、中小・零細企業による週40時間労働の適切な導入の支援策として、次の5つを挙げた。
- 事務手続き簡素化のためのデジタルツール導入
- 労働時間短縮によるコスト増を補完するための税制インセンティブ付与
- 技術ツールへの投資を行うための資金調達支援
- 消費促進キャンペーンによる地場産業の強化
- 週40時間労働の導入を監督・評価する機関の設置
メキシコ経営者連合会(COPARMEX)も、5.で言及されたような第三者委員会の設置を提案しており、政府関係者と雇用主、労働者の代表者で構成する委員会で、国内外のマクロ経済状況を踏まえ、定期的に制度導入のペースが妥当かを判断する必要性を強調した。一方、労働組合側からは、労働者の身体的・心理的負担軽減の観点から、2030年を待たず迅速な制度導入を求めており、政府、雇用主、労働者それぞれの制度導入目標時期には引き続き乖離が存在している。
(加藤美帆、渡邊千尋)
(メキシコ)
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