欧州産業界、EUの次期MFF案に提言、新たな財源案や共通農業政策刷新案には批判の声

(EU)

ブリュッセル発

2025年07月30日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は7月16日、欧州委員会が同日発表した2028~2034年の中期予算計画(MFF)案(2025年7月22日記事参照)に関し、欧州競争力基金の創設やインフラ整備に係る「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)」の拡充などを歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、結束政策の助成申請手続きの簡素化や欧州社会基金の15%を従業員研修に充当することに加え、研究開発分野ではガバナンスの強化や共同研究のための予算の確保を提言した。一方で、独自財源案に強い懸念を示し、特に「欧州のための企業リソース(CORE)」は企業にとって新たな負担となり、EUの競争力や投資先としての魅力を損なうと反発した。

欧州中小企業連合会(SMEunited)は16日、予算案をおおむね歓迎しつつ、中小企業支援に特化した財源確保や、欧州社会基金は未活用人材の掘り起こしや労働市場の流動化促進も目指すべきと提言した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ビジネスヨーロッパと同様、企業の負担増となる独自財源案は、競争力強化に逆行すると反対した。

情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは16日、競争力と安全保障に重点を置いた簡潔、戦略的でより柔軟な長期予算への第1歩と歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今後、申請手続きの迅速化・簡素化や、価格より安全保障を重視した共同調達などを原則として、財政支援の内容を固めるよう提言した。

欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)は16日、共通農業政策(CAP)の刷新案について、同部門はEU域内の農産品の70%を買い入れるため、農業政策の安定性や予見可能性は重要であり、特に加盟国の裁量を拡大すると、域内における格差、単一市場の歪曲や食料生産の不安定化を招くと批判した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、持続可能な農業生産への移行や自然再生に関しては、CAP以外にEUレベルの支援や、中小企業に特化した支援策が必要と述べた。

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体のCOPA-COGECAは翌7月17日、欧州委案は農業政策の根底を崩す急進的なものであり、受け入れがたいと述べた。COPA-COGECAは6月19日、農場や団体などにCAP刷新への反対署名を呼び掛けるウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開設し、7月28日時点で7,500以上の署名を集めている。

写真 欧州委員会前で7月16日、MFF案に抗議する農業生産者(ジェトロ撮影)

欧州委員会前で7月16日、MFF案に抗議する農業生産者(ジェトロ撮影)

(滝澤祥子)

(EU)

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