中国、外資企業の配当収益による国内投資に対する税額控除政策を発表

(中国)

北京発

2025年07月04日

中国の財政部、国家税務総局、商務部は6月30日、「外国投資家の配当収益による直接投資に対する税額控除に関する公告」(財政部、税務総局、商務部公告2025年第2号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2025年1月1日から2028年12月31日の期間、外国投資家の配当収益による中国国内直接投資が一定の条件に適合する場合、投資額の10%を外国投資家の該当年度の納税額から控除するとした(注1、注2)。該当年度の納税額が投資額の10%に満たない場合は次年度以降に繰り越すことができるとしている。

同公告で求められる一定の条件とは、次の事項を同時に全て満たす場合としている。

  1. 外国投資家の配当収益は、中国国内に所在する企業が投資家に対し実際に分配した、利益剰余金による株式利息や配当などの権益性投資収益を指す。
  2. 外国投資家が配当収益を用いて行う国内直接投資は増資、新規設立、持ち分買い取りなどの権益性投資を含む(注3)。一定の条件を満たす戦略的投資(注4)を除く上場企業への資本金払い込み、資本剰余金などの資本金組み入れによる増資、株式買取は含まない。
  3. 外国投資家の国内再投資の期間中、投資先企業が「外商投資奨励産業目録」(注5)に記載されている産業に属していること。
  4. 外国投資家の国内再投資は少なくとも5年(60カ月)保有されなければならない。
  5. 外国投資家が国内直接投資に用いる配当収益が現金で支払われる場合、当該資金は利益分配企業から投資先企業、または持ち分譲渡人に直接移されることとし、投資が行われる前に国内外の他の口座に移してはならない。また、外国投資家が国内直接投資に用いる配当収益が現物や有価証券など現金以外となる場合、当該資産の所有権は利益分配企業から投資先企業、または持ち分譲渡人に直接移されなければならない。

これら条件に合致する外国投資家は、投資先企業を通じて商務主管部門に報告を行うこととしている。また、商務主管部門は海外投資家の配当収益による再投資の追跡管理を行うとし、同公告の規定に反する状況が判明した場合、追徴課税が発生するとしている。

なお、財政部など4部門は2018年9月に「外国投資家による配当利益の直接再投資に対する源泉所得税の一時免除政策の適用範囲拡大についての通知」(財税[2018]102号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、外国投資家が中国国内企業から得た配当収益を原資に直接投資を行う場合、一定の条件を満たすことで納税義務を繰り延べられると定め、源泉所得税の徴収を猶予していた。今回の2025年第2号公告は、前述の納税猶予政策を拡充・改善するもので、今回新設した税額控除制度により、「納税猶予・税額控除」という二重の優遇措置が構築され、税制政策を通じて外資導入構造の最適化を図り、外国投資家の再投資意欲を高めることを目的としている。

(注1)同公告における海外投資家の税額控除可能額は、利益分配や再投資を実施して以降、利益分配企業から得た配当、利子、ロイヤルティーなどに関し、外国投資家が納付すべき企業所得税が対象となる。なお、2025年1月1日から同公告の公布日までに行われた投資で、公告の条件を満たす外国投資家は、さかのぼって税額控除を申請することができる。

(注2)外国投資家の該当年度の納税額から控除する部分(投資額のパーセンテージ)について、同公告では、中国政府と外国政府の間で締結された租税協定で、配当などの投資収益に適用される税率が10%を下回る場合は、協定で定めた税率を適用するとしている。「所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国との間の協定」第10条に基づき、日中間の配当などの投資収益に適用される税率は10%だ。

(注3)同公告では具体的に次の3つの事例を示している。国内企業の払込資本金や資本剰余金の増額、中国国内での企業の新規設立、非関連者からの国内企業の持ち分買い取り。

(注4)戦略的投資については、2024年12月2日施行の「外国投資家による上場会社に対する戦略的投資の管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で定めている。

(注5)現時点では2022年版が最新となる(2022年11月4日記事参照)。なお、同目録改定についての意見募集が2024年12月から2025年1月にかけて実施されていた(2024年12月26日記事参照)。

(亀山達也)

(中国)

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