米国防総省、レアアース磁石の国内供給強化に向け、MPマテリアルズに4億ドル投資

(米国)

サンフランシスコ発

2025年07月15日

レアアースの採掘・精製・製造を行うMPマテリアルズ(本社:ネバダ州ラスベガス)は7月10日、米国国防総省と官民パートナーシップ契約を締結し、米国内でのレアアース磁石のサプライチェーンの構築を加速し、外国依存度を減らすことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は、レアアース産出量では世界第2位の米国内で唯一稼働しているカリフォルニア州マウンテンパスの鉱山からレアアースを採掘、精製し、永久磁石を製造している。製品は輸送やエネルギー、ロボット工学、防衛、航空宇宙などハイテク産業に使われており、バイデン前政権下でも国防総省から支援を受けていた(2022年2月24日記事参照)。

今回、国防総省との長期契約により、同省は同社の株式4億ドル相当を取得する。同社は2つ目の磁石製造施設(10X)を建設し、レアアース磁石の国内生産を加速する。2028年に試運転を開始し、年間約1万トンの磁石を製造可能となる。さらに、マウンテンパスにある施設に重レアアースの分離機能を追加し、高純度レアアース材料の抽出、分離、精製を同一拠点で実施する「国家戦略資産」としての地位を強化するとした。

主な契約内容は次のとおり。

  • 国防総省は、MPマテリアルズのネオジム・プラセオジム(NdPr)製品にキログラム当たり110ドルの価格下限を10年間保証する。
  • 国防総省は、新たな施設(10X)建設後、同社の全ての磁石製品を10年間購入することを保証する。価格が上がった場合は、利益を共有する。
  • 同社の新たな施設(10X)の建設と開発費用として、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスから10億ドルの資金提供を受けるためのコミットメントレターを取得する。
  • 同社のマウンテンパスでのレアアース分離機能の拡張のため、国防総省から1億5,000万ドルの融資を受ける。
  • 国防総省は、同社の株式4億ドル相当分を購入する。

レアアース磁石は防衛から商業応用まで先端技術に幅広く使われる重要な部品の1つだが、米国はほぼ海外に依存しており、その大半が中国からの輸入となっている。同社は既にネオジム・プラセオジム(NdPr)製品の商業生産を開始し、2025年第1四半期(1~3月)には563トンを生産した。また、ネオジム磁石は試験生産段階にあるが、2025年末までに年間1,000トン規模の商業生産体制への移行を目指している。

(芦崎暢)

(米国)

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