第2四半期GDP成長率は輸入減により前期比年率3.0%となるも、民間需要の伸びは緩やか

(米国)

ニューヨーク発

2025年07月31日

米国商務省が7月30日に発表した2025年第2四半期の実質GDP成長率(速報値)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、前期比年率3.0%と前期のマイナス成長から大幅に増加した(添付資料表、図参照)。市場予想は2.5%でこれを上回った。しかし、今回の伸びは、前期における関税前の駆け込み需要による反動で、輸入が減少したことが寄与しており、民間需要の強さを示す民間国内最終需要(注)は1.2%増と2023年以降では最も低い伸びとなった。

需要項目別にみると、今回のGDPを最も押し上げたのが外需だ。前期の駆け込み需要からの反動減の影響で、コンピュータや医薬品などを中心に輸入(30.3%減、寄与度5.2ポイント)が大きく落ち込んだ結果、純輸出(5.0ポイント)が大きく伸びた。

一方の内需は、外需よりもかなり緩やかな伸びとなった。個人消費支出(PCE)は1.4%増、寄与度1.0ポイントで、前期(0.5%増、0.3ポイント)からは緩やかに回復したが、2024年通年の約半分の伸びにとどまる。財部門では主に自動車(消費内寄与度0.6ポイント)、サービスではヘルスケアサービス(同0.5ポイント)が伸びた。

住宅投資(4.6%減、マイナス0.2ポイント)は前期(1.3%減、マイナス0.1ポイント)に続いて2四半期連続のマイナスとなった。2024年と同様の金利高や価格高騰に加え、家計の先行きに対する不安などから需要が低迷しており、弱含みの傾向が顕著となった。

設備投資(1.9%増、0.3ポイント)は、ソフトウエア投資(設備投資内寄与度2.7ポイント)が引き続き堅調である一方で、前期のコンピュータ関連の駆け込み需要の反動減により情報関連機器の伸びが大きく減速した(同0.9ポイント、前期は9.1ポイント)。このほか、関税政策の影響による工場への投資見合せなどにより構築物(同マイナス2.0ポイント)への投資が減少した結果、全体としては緩やかな伸びにとどまった。

在庫投資は、輸入減に連動するかたちで大きく減少(マイナス3.2ポイント)した。

トランプ大統領は今回の結果について「予想をはるかに上回る好調」と歓迎するコメントを発しているが、民間需要は緩やかな伸びにとどまっており、米国経済の先行きは予断を許さない。株価の安定やこれを背景とした高所得者層消費の堅調さ、関税交渉の進展に伴う消費者マインドの回復などポジティブな面が見られる一方で、関税引き上げに伴うインフレへの影響(2025年7月16日記事参照)も表れ始めている。過去数年間は高インフレにもかかわらず消費は堅調に拡大してきたが、その背景には、(1)余剰貯蓄など高インフレのバッファーとなる存在、(2)労働需要の高さを背景とした賃金上昇の強さ、など現在とは異なる前提が見られていたのも事実で、今後、消費がどのように推移していくのかは不透明な面な状況だ。

(注)家計と企業による国内での最終需要を表すもの。政府支出、在庫投資、純輸出などが除かれており、現在のように政策による一時的な影響が大きい場合には、民間需要の実勢をより正確に反映できる可能性がある。

(加藤翔一)

(米国)

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