タイ商務省、迂回防止策を具体化、新たな調査方針も表明
(タイ)
バンコク発
2025年07月07日
タイ商務省・外国貿易局(DFT)は6月27日、不公正な貿易慣行への対処として、迂回防止措置のほか、貿易救済措置であるアンチダンピング税(AD)や相殺関税(CVD)、セーフガード(SG)について、現状や今後の計画(2025年下半期)を報告した(タイ国営放送NBT、6月27日)。
DFTウェブサイトによると、迂回は「生産者、輸出者、組立者が、輸入国側で課されるADやCVDを回避する目的で利用される慣行」を指す。タイは「2019年アンチダンピング・相殺法(No.2)」法に基づき、迂回行為を次の5類型に区別し、いずれかに該当し、その他迂回を認定すべき要件を満たす場合に、反迂回措置として、AD/CVDを拡大適用することが可能。
- 軽微な変更(slight modification):製品の形状、外観、包装などをわずかに変更することで、製品の本質的な特性を変えることなく、ADやCVDを回避する行為。
- 積み替え(Transshipment):AD/CVDの対象製品を、第三国を経由してタイへ輸出する行為。
- チャネリング(Channeling):輸出者または生産者が販売経路を再編成し、AD/CVDの対象外または低率の関税が適用される輸出者・製造者を通じて、タイへ輸出する行為。
- 完成加工(Completion):未完成品または半製品を完成品に加工し、タイまたは第三国におけるAD/CVDの対象製品と同一の製品として輸出する行為。
- 組立作業(Assembly operations):AD/CVDの対象国からタイまたは第三国に部品を輸入し、AD/CVDの対象製品と同一の製品に組み立てる行為。
DFTのアラダ・フアンタング局長は、タイは現在、中国の17社から輸入される熱延合金鋼板に対して1件の反迂回貿易措置を実施していると報告した。また、DFTは現在、3件の反迂回調査の開始を検討している。加えて、原産地偽装への対応としては、米国向け輸出の監視対象品目(ウォッチリスト)を65品目〔200以上の関税分類(HSコード)〕に拡大準備中で、7月中に確定する見通しを示した。アラダ局長は6月に、非特恵の原産地証明書(C/O)の審査厳格化を提言していた(2025年6月16日記事参照)。
手続き面でも、「原産地証明書検認システム(ROVERsプラス)」について、DFTは政府の中央デジタルプラットフォームと統合し、ペーパーレスの事前検証サービスの接続を進める予定(2024年2月22日記事参照)。また、今後8~9月にかけて、自己証明制度の信頼性向上などのため、ASEAN向け、スイス・ノルウェー向け(GSP認定輸出者)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定締約国向けに関して、輸出者に対する無作為検査を行い、迂回調査を始める。
貿易救済措置に関して、タイは鉄鋼製品を中心にADを22件(22カ国)発動する一方、CVDとSGは発動実績がない(注)。DFTの計画では、今後AD調査を2件、SG調査を1件開始する見通し。
(注)DFTによると、タイは被発動国として、ADで18カ国から73件(鉄鋼・化学製品、ゴム製品など)、CVDで7品目(インド:銅線、合板、銅管、飽和脂肪酸、米国:熱延鋼板、太陽電池、ベトナム:砂糖)、SGで9カ国から19品目(鉄鋼・化学製品など)がそれぞれ対象になっている。
(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ)
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