日米豪印クアッド外相会合、重要鉱物イニシアチブの立ち上げを発表
(米国、日本、オーストラリア、インド)
ニューヨーク発
2025年07月03日
日本、米国、オーストラリア、インドによる日米豪印(クアッド)4カ国の外相は7月1日、米国の首都ワシントンで第10回クアッド外相会合を実施し、「日米豪印重要鉱物イニシアチブ」の立ち上げを発表した。
4カ国の外相は共同声明〔国務省発表(英文)、外務省発表(和文)
〕およびファクトシート〔国務省発表(英文)
〕で、重要鉱物のサプライチェーンの信頼性に懸念を表明した。また、重要鉱物の加工や精製などの単一国への依存は、経済的威圧、価格操作、サプライチェーン途絶のリスクを及ぼし、経済安全保障および国家安全保障を損なうと問題視した。4カ国は新たに立ち上げた重要鉱物イニシアチブを通じて、重要鉱物のサプライチェーンの確保と多様化、電子廃棄物(e-waste、注)に含まれる重要鉱物の回収と再加工などに関する協力を強化する。
共同声明では「単一国」の具体的な国名は記載されていないものの、中国の重要鉱物の輸出管理措置を念頭にしたものとみられる。米中両国は英国ロンドンでの通商協議を通じて、両国の輸出管理緩和の方向性で合意したとみられるが(2025年6月13日記事参照)、ジェトロの米国の弁護士事務所やシンクタンクへのヒアリングによると、中国の重要鉱物の輸出管理緩和を示す明示的な兆候はこれまでみられていない。
また、4カ国外相は重要鉱物イニシアチブを含めて、海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術および人道支援・緊急対応の4つの分野を推進することを確認した。また、「自由で開かれたインド太平洋」へのコミットメントを再確認し、協力の強化を確認した。なお、今後は2025年後半にインド主催で4カ国の首脳会合が、2026年にオーストラリア主催で4カ国の外相会合が開催される予定だ。
日米外相会談、米国の関税措置も意見交換
日本の岩屋毅外相と米国のマルコ・ルビオ国務長官は同1日、日米外相会談を実施した。外務省の発表によれば、両外相は米国の関税措置に関しても意見交換し、双方に利益をもたらす合意の実現に向け、担当閣僚間の協議を後押しすることを確認した。また、国務省報道官は同日、日米外相会談に関して、「ルビオ長官は日米同盟がインド太平洋の平和と繁栄に不可欠であることを強調し、日本との安全保障およびエネルギー分野におけるより深い協力について協議した」と述べた(国務省発表
)。
(注)パソコン、携帯電話、家電製品などの電気電子機器の廃棄物。重要鉱物などの鉱物資源が含有されるが、国連の電子廃棄物の報告資料によれば、電子廃棄物の回収・リサイクル率は2022年時点で22%にとどまる。
(葛西泰介)
(米国、日本、オーストラリア、インド)
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