マレーシア、米国製先端AI半導体の輸出規制を強化、即日実施
(マレーシア、米国)
クアラルンプール発
2025年07月16日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は7月14日、米国製の先端人工知能(AI)半導体の輸出・積み替え・通過に際し、事前許可の取得を義務付けると発表した。この措置は即日発効した。
措置の根拠は、兵器および兵器になりうる機器・設備などの輸出・積み替え・通過を規制する2010年戦略貿易法(Strategic Trade Act 2010)。MITIによれば、同法第12条に定めるキャッチオール規制に基づき、戦略品目リスト(SIL)に規定されていない品目であっても、当該品目が輸出・積み替え・通過の際に不正使用される、あるいは制限活動に使用される恐れがあると判断される場合、企業や個人は少なくとも30日前までにMITI戦略貿易局に通知する必要がある。同局が同日に出した戦略貿易管理者指令第1/2025号
によれば、規制の対象となるのは、演算処理半導体や先端AI半導体など9品目。指令の付属書で詳細が確認できる。原産国からの再輸出許可証と生産者による輸出管理製品分類も添付する必要がある。
マレーシア政府は、輸出規制の回避や違法な貿易活動に対しては厳格な法的措置を講じる方針を繰り替えし強調してきた。今回の措置も、米国製先端AIチップをSILに追加するための検討を行う間、規制の抜け穴を防ぐために導入した、とMITIは説明した。
MITIは前週、日本などとともに、追加関税率を定めた書簡を米国から受領し、同国との交渉継続を表明したばかり(2025年7月9日記事参照)。アンワル・イブラヒム首相も7月10日、ASEAN関連外相会議でマレーシア訪問中のマルコ・ルビオ米国務長官に対し、税率引き下げを直接要請していた。米国との交渉期限が約2週間後に迫る中、MITIは今回の声明で、マレーシアが国際的なベストプラクティスや多国間で合意された義務に基づき貿易投資を支持し、国内企業に対し関連の国際的義務の順守を求めていると強調。安全で透明性があり、ルールに基づいた貿易環境の維持に引き続き取り組むとともに、迂回輸出のような、マレーシアの管轄を悪用した違法な貿易活動を容認しない姿勢をあらためて明らかにした。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、米国)
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