米CNBCがビジネスに最適な州を発表、ノースカロライナ州が2年ぶりに首位獲得
(米国)
アトランタ発
2025年07月22日
米国のビジネス専門メディアCNBCは7月10日、同社が発行する「ビジネスに最適な州」ランキングの2025年版で、ノースカロライナ州を1位に選定したと発表した。同州は2022年、2023年と2年連続で1位に選出され(2023年7月14日記事参照)、2024年は僅差でバージニア州に敗れて2位だった。過去4年間で3度目の1位となる。
このランキングでは、経済、インフラ、労働力など競争力に関する10項目(注1)の135指標について全米50州を採点し、ビジネスに最適な州として総合順位を掲載している。19年目となる2025年は、貿易戦争や連邦予算の縮小による州のリスクを測る指標を追加したほか、各州が企業の電力需要やデータ需要にどのように対応しているかを把握するため、インフラ指標の一部を強化した。
2025年は、1位ノースカロライナ州(前回2位)、2位テキサス州(3位)、3位フロリダ州(5位)となった。ジョージア州は7位(4位)、テネシー州は8位(8位)に入り、南東部の4州が上位10州にランクインした。
ノースカロライナ州のジョシュ・スタイン知事(民主党)は受賞に際して、「州民、ビジネス環境、一流の研究大学、優れたコミュニティーカレッジ制度、インフラ、高い生活水準が企業と労働者の双方の繁栄に貢献している。この環境づくりに尽力してきたロイ・クーパー前知事や(民主・共和)両党の州議会議員をはじめとする指導者に感謝する」と述べた。
項目別にみると、ノースカロライナ州は今回の調査で最も重要とされた項目「経済」(注2)で、フロリダ州とテキサス州に次いで3位(前年4位)になった。ノースカロライナ州は2024年、GDP成長率が3.7%と、全米で5番目の伸びを記録し、6万人以上の雇用を創出した。また、「労働力」「ビジネスのしやすさ」「教育」「資本へのアクセス」で上位にランクインした。一方、「生活の質」(注3)は29位で、10項目中最下位となった。CNBCは、貧困や不正根絶を目指す国際NGOのオックスファム(Oxfam)が同州の労働者保護の欠如を指摘している点や、全米州議会議員連盟(NCSL)が公共施設での差別から非障害者を保護する法律がない州の1つに同州を挙げている点に言及した。
また、発表では、同州のビジネス環境を悪化させかねない要素として、2024年9月末に米南東部を襲い、同州に600億ドル近くの被害をもたらしたハリケーン「へリーン」からの復興に伴う負担を挙げた。ヘリーン被害からの復興については、州政府が20億ドル以上の基金を計上しているほか、2025年5月30日の連邦緊急事態管理庁(FEMA)の発表によると、FEMAも785人以上の職員を同州に配置し、がれき撤去費用の90%を負担している。トランプ政権がFEMAの段階的廃止計画を実行に移せば、連邦政府の支援が減少し、州政府の人的・財政的資源が逼迫する可能性がある。
また、同州がトランプ政権による予算削減の危機に瀕している米国立衛生研究所(NIH)と米国立科学財団(NSF)の助成金受給額の上位州という点も指摘した。そのほか、7月4日に成立した「大きく美しい1つの法案」(2025年7月4日記事参照)によるメディケイド削減や、2024年のGDPの2割以上を国際物品貿易が占める同州にとって、関税引き上げの影響を受けやすい点もリスクとして指摘した。
(注1)経済、インフラ、労働力、事業コスト、ビジネスのしやすさ、生活の質、テクノロジーとイノベーション、教育、資本へのアクセス、生活コスト。
(注2)各州の経済開発に関するマーケティング活動を分析した結果に基づき、各項目の加重を決定する。2025年は景気後退への懸念が高まる中、これまで以上に多くの州が自国の経済力をアピールしており、「経済」が最も重要な項目となった。
(注3)「生活の質」では、犯罪率、環境の質、医療といった住みやすさを評価項目として設定。労働者保護制度(生活賃金政策、有給休暇、団結権など)、州法の包括性(あらゆる種類の差別に対する保護、投票権、安全な選挙制度など)、生殖に関する権利も含む。
(横山華子)
(米国)
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