英政府、労働者の権利強化に向けた措置のロードマップ公表、段階的な導入へ

(英国)

ロンドン発

2025年07月08日

英国政府は7月1日、審議中の雇用権利法案の導入に向けたロードマップを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。法案は2024年10月に発表(2024年10月18日記事参照)された後、2025年3月に修正(2025年3月21日記事参照)が加えられている。

多くの項目について2026年の発効が見込まれていたが、勤務初日からの不公正解雇に対する保護、柔軟な働き方を希望する権利や、搾取的なゼロ時間契約(雇用主が最低労働時間を保証しない雇用契約)の禁止などは2027年以降に後ろ倒しとなった(「BBC」2025年7月1日)。政府はこれまで関係者から意見公募を行ってきたが、多数の措置が含まれることや、影響範囲に鑑み、労働者には明瞭さ、雇用主には準備期間を与えるため段階的に導入するとした。詳細についての意見公募は2025年夏以降、2026年にかけて継続する。ロードマップの主要な内容(発効時期ごとの主な措置)は次のとおり。

〇法案成立後

  • 労働争議参加を理由とする解雇に対する保護

〇2026年4月

  • 適正な方法で集団的解雇が行われなかった場合の従業員への最長補償期間を現在の90日から180日に拡大
  • 父親の育児休暇および両親の無給育児休暇を取得する権利を雇用初日から付与
  • 内部告発者に対する保護
  • 公正労働庁の設立
  • 疾病手当の拡大
  • 承認手続きの簡素化など労働組合関連の政策パッケージの導入

〇2026年10月

  • 労働条件の引き下げなどを目的とした解雇後の再雇用の廃止
  • 雇用主に対する合理的なセクハラ防止策策定義務の導入
  • 雇用主に対する第三者による自社従業員へのハラスメント防止義務の導入

〇2027年

  • 男女間賃金格差の解消と、更年期を迎える従業員の支援に係る行動計画の策定
  • 妊婦、産休中および職場復帰した従業員に対する保護の強化
  • ハラスメントからの保護のさらなる強化
  • 労働組合に係る法的枠組みを現代の労働慣行に合わせたものに刷新
  • 忌引休暇を取得する従業員に対する保護
  • 搾取的なゼロ時間契約の廃止
  • 不公正解雇から保護される権利の勤務初日からの付与
  • 雇用主が不合理と証明できない限り、柔軟な働き方をデフォルト化

(野崎麻由美)

(英国)

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