英政府、雇用権利法案の修正案発表、労働者の権利のさらなる強化へ

(英国)

ロンドン発

2025年03月21日

英国政府は3月4日、雇用権利法案(2024年10月18日記事参照)の修正案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。10月の議会提出後、企業や労働組合などから意見公募を行って修正したものだ。政府はこれを企業、労働組合と協力するというコミットメントを示すものとしている。修正内容は次のとおり。

  • 搾取的なゼロ時間契約の廃止について、対象を派遣労働者まで拡大。通常の労働時間を反映した「保証時間契約」(注)を締結する権利を付与する。
  • 労働組合の活動に係る法的枠組みを現代の労働慣行に合わせたものに更新。労働組合の承認プロセスや労働組合へのアクセスの透明性を改善する。
  • 集団的解雇や労働条件の引き下げを目的とした解雇後の再雇用への対策強化。従業員への最長補償期間を現在の90日から180日に拡大する。これにより、雇用主が従業員に対する事前のコンサルテーション義務に違反した場合の補償額の拡大を図る。
  • 疾病手当の拡大。国民保険の保険料支払い義務を免除されている層を含む低所得者への支給額を週当たり収入の80%、または法定疾病手当のいずれか低い方とする。
  • 傘下会社(Umbrella Company)による法令順守の強化。現在は規制対象外となっている傘下会社を通じて派遣される労働者の権利と保護について、派遣会社から直接派遣される労働者と同様のものとする。

英国産業連盟(CBI)は今回の政府発表を受けて、意見公募が重要な分野の有意義な変化につながっていないと不満を表明し、良質な雇用の創出を妨げる法律としないためにも、労使の合意形成が必要とした。

政府は今回の修正案を第1段階と位置づけ、今後、同法案の運用に関する意見公募を2025年中に実施する予定としている。

(注)一定の期間、規則的な時間で働く労働者が希望した場合に付与される、定められた労働時間とそれに伴う収入の保証。

(野崎麻由美)

(英国)

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