英政府、太陽光発電の拡大に向けてロードマップ発表

(英国)

ロンドン発

2025年07月14日

英国政府は6月30日、太陽光発電ロードマップ(UK Solar Roadmap)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは、2030年までのクリーン電力目標に必要な太陽光発電の設備容量〔45~47ギガワット(GW)〕への拡大を実現し、エネルギー安全保障を強化するために、産業界と英国政府がとるべき戦略と行動計画を示すものとなっている。

英国政府は商業、家庭、公共部門で屋上太陽光パネルの設置を推進し、グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)による約200カ所の学校と最大200カ所の病院へのパネルの設置や、リースされた産業・商業用建物の屋上パネル改修向けの標準的な契約の作成などを行う。

電力ネットワーク関連では、小規模発電事業の接続改革と公平性の確保、電力・ガス市場局(Ofgem)の見直しを通じて配電事業者(DNO)のサービス水準を改善し、タイムリーな接続を図るなど、規制の枠組み変更に焦点を当てている。また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたプロジェクトが増えてきていることを踏まえ、そうしたプロジェクトを申請する開発事業者の障壁を取り除くため、容量情報の公表範囲を拡大して需要プロジェクトの情報も含めることを検討する。

サプライチェーンイノベーション関連では、GBE設立法案に奴隷労働と人身取引への対策措置を追加し(2025年5月13日記事参照)、製造業者向けの支援制度や政府機関の連絡先などをまとめたダイレクトリーの設置、市民団体・中小企業への支援、次世代太陽光パネルの基準開発に対する模索を取り上げている。

計画支援制度については、地方での計画承認に際し、再生可能エネルギー(再エネ)・低炭素エネルギー関連のプロジェクトに重きを置くことを目的に、全国都市開発計画指針(NPPF、注)を刷新し、さらに、国家重要インフラ計画(NSIP)制度の対象となる発電容量の閾値(いきち)を50メガワット(MW)から100MWに引き上げる。これにより、より多くの中規模太陽光発電プロジェクトを地方レベルでの承認プロセスの対象とすることで、承認の迅速化と申請コストの削減を図る。その他にも、地方計画への4,600万ポンド(約91億5,400万円、1ポンド=約199円)の資金提供、太陽光発電プロジェクトの試運転目標期間の拡大や15年間の契約期間延長のメリットを検討するなど、新規の発電容量の支援に向けた再エネ支援スキーム差額決済契約制度(Contracts for Difference、CfD)改革の可能性議論、浮体式太陽光発電への支援の見直しもある。

英国政府はロードマップ実施を監督するために、新たな太陽光協議会を設立し、上記の行動計画の進捗状況の監視、実施の推進、産業界と政府との戦略的な関与を促進する。

(注)イングランドにおける政府の計画政策、運用を定めたもの。

(バリオ純枝)

(英国)

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