英政府、現代奴隷法に基づき企業が作成する年次声明のガイダンスを改定

(英国)

ロンドン発

2025年05月13日

英国内務省は3月27日、「サプライチェーンの透明性:実践ガイド」を改定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2024年10月に上院特別委員会が発表した、「2015年現代奴隷法」(注)立法後評価を受けて行われたもの。委員会では、同法がもはや世界を牽引するものではなく、世界的な進展に遅れをとっており、また現在の移民法が被害者に対する法的支援を制限しているとされていた。

改定版ガイダンスは、現代奴隷法第54条で規定されている「奴隷・人身取引声明」に関する年次声明の開示項目についてのもの。同条では、声明の中に盛り込むことが推奨される6項目を規定。今回の改定では各項目で記載する内容につき、基本的な情報(レベル1)と、詳細な情報(レベル2)に分け、企業の理解度に応じてレベル2まで含めるよう実践的なアドバイスを提供している。レベル2の情報として明記された各項目の内容例は次のとおり。

  • 組織構造とサプライチェーン:商品やサービスの調達、人材や原材料のサプライヤーなども含めた組織構造の分析とサプライチェーン図の作成(マッピング)。
  • 組織方針:調達部門やサプライヤー、労働組合、非政府組織(NGO)などとの関与方法。
  • リスクの評価と管理:リスクの特定に向けた従業員との継続的な関与の証拠、およびサプライヤーとの連携や調達慣習に関する改善の証拠。
  • デューディリジェンス:調達における現代奴隷の防止に向けた活動、苦情処理メカニズムなどに関する詳細。
  • 研修:組織内での役割に応じて実施する研修の詳細。
  • モニタリングと評価:産業ごとのリスクに合わせた明確な目標の設定と、進捗状況の測定。

公営エネルギー企業の調達においても人権を重視

政府は4月23日、審議中の公営クリーンエネルギー企業「グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)」設立法案(2024年8月7日記事参照)の改正案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、サプライチェーンからの強制労働排除を確保するとした。既に違法または倫理に反する取り組みを行う企業は、GBEとの契約への応札を禁止されている。

(注)ジェトロ調査レポート「英国2015年現代奴隷法(参考和訳)」を参照のこと。

(野崎麻由美)

(英国)

ビジネス短信 73cc1d7f50814532