大型産業博覧会「イノプロム」開催、産業用ロボット国産化に関心
(ロシア)
調査部欧州課
2025年07月18日
ロシア中部の工業都市エカテリンブルクで7月7日から10日、第15回となるロシア最大級の産業総合博覧会「イノプロム2025」が開催された。出展企業数は2024年の900社から増え、1,000社超となった(「コメルサント」7月7日)。「技術的優位性:産業の飛躍」を展示会のメインテーマとした2025年は、前年12月に発表された国家プロジェクト(注)を意識した展示やビジネスプログラムが目立った。
イノプロムが行われた国際展示場「エカテリンブルク・エキスポ」(ジェトロ撮影)
2025年のパートナーカントリーはサウジアラビアで、同国から約20の政府機関や投資誘致団体のほか、企業も約20社が参加した。企業はスクリーン付きのブースで製品を展示した。なお、首都リヤドで2026年2月8日~10日、イノプロムから派生した博覧会「産業ウイーク・サウジアラビア2026」が行われる予定だ。
ナショナルパビリオンを設置したのは、サウジアラビアと、ベラルーシ、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスの計5カ国で、前年より1カ国減った。このうちベラルーシでは、2025年9月29日~10月1日に初めて「イノプロム・ベラルーシ」が開催される。ウズベキスタンでも、2021年から「イノプロム・中央アジア」が開催されている(2025年5月13日記事参照)。また、2025年は隔年でイノプロムと併催される「ロシア・中国エキスポ」も行われ、300を超える中国企業が自動車を含む幅広い品目を出展した。
生産工程の自動化、特にロボット技術の導入は、技術的優位性を支える重要な要素の1つとされ、関心を集めた。2024年5月の大統領令第309号「2030年までのロシア連邦の国家発展目標と2036年までの展望について」(2024年5月16日記事参照)では、生産設備の製造分野で技術的自立の達成レベルを95%まで引き上げることや、製造現場のロボット化率で世界の上位25カ国入りを果たすことなど、2030年までに達成すべき目標が承認された。イノプロムに出展するロシア企業からは同目標を意識しながら、国産化率の引き上げを目指しているといった発言が何度か聞かれた。会場に展示されていたロボットの国産化率は、企業やモノによって10%から90%までばらつきがあった。国内生産コストの上昇により、ロボット生産のローカリゼーションが進まないという側面がある。ある出展企業は「特に減速機は中国からの輸入に依存しており、課題として認識している」と話した。
エカテリンブルク市のあるスベルドロフスク州のブース(ジェトロ撮影)
イノプロムの会期中、ビジネスプログラムの一環として数多くのセミナーも開催された。その1つの「未来のロボット化」と題したセッションで、ケプト(旧KPMG)の戦略・業務コンサルティング部長のニコライ・チェルネツォフ氏は、ロシアが産業用ロボット化率で世界の上位25位に入るには、ロボットの50%を輸入に依存する必要があると発言した。輸入ロボットの導入によって上位25カ国入りを目指すか、品質や価格の面で輸入品に劣る国産ロボットの開発を継続するかという課題に直面していると、ロシアの現状の厳しさに言及した。
満席となり関心の高さがうかがえる「未来のロボット化」のセッション(ジェトロ撮影)
(注)世界で技術的主導権を獲得するため、国家予算を投じて「新素材と化学」「生産手段と自動化」「新しい原子力・エネルギー技術」「輸送モビリティーの確保」「無人航空システム」「技術面からの食糧安全保障」「健康維持の新技術」などの分野を振興するプロジェクト(2025年4月3日記事参照)。
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