サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで環境政策や脱炭素を議論

(ロシア)

調査部欧州課

2025年07月03日

ロシア最大級の経済フォーラム「第28回サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)2025」が、6月18日から21日までサンクトペテルブルクで開催された(2025年6月26日記事参照)。フォーラム内のいくつかのセッションでは、ロシアの環境政策や、脱炭素再生可能エネルギー(RES)導入に関する取り組みについて議論された。

ウラジーミル・プーチン大統領は20日の全体演説で、世界が気候変動と深刻な環境問題への対応が求められていると述べ、国内の天然資源の保全や、産業や鉱業の廃棄物の適切な処理を進めると発表した。

国内規制の整備について、石油大手タトネフチのナイル・マガノフ社長は19日、ロシアは依然として世界とサプライチェーンで結ばれているなか、中国、欧州、米国で気候変動規制が導入されていることを指摘、ロシア企業も脱炭素対策が求められていると主張した(「タス通信」6月19日)。ロシア連邦商工会議所のセルゲイ・カティリン会頭は、20日の「ロシア経済における循環産業とその発展」のセッションで、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進はロシアの技術的自立を達成するために必要だと指摘した。

炭素排出権取引にも焦点があてられた。ガスプロムバンクのエカテリーナ・サルギナ・ソロコワヤ第1副頭取は19日の「国際貿易と気候変動規制」セッションで、炭素規制が国際貿易に与える影響が増えており、BRICSなどの新興国における炭素市場・取引の重要性を挙げた。ガスプロムバンクは2024年に初めてロシアのカーボンクレジットの販売を海外で行ったと説明した(同行ニュース2025年6月23日)。

バイオ燃料や「持続可能な航空燃料(SAF)」関連では、18日に政府系ガス大手ガスプロムの石油子会社ガスプロム・ネフチと、国内で廃油処理の規制などについて法務支援サービスを行う廃油処理業者協会が、国内の飲食店や農業生産者などから廃食油の収集、輸送、処理をする一貫システムの開発に係る合意文書に署名した。加工された廃食油は、船舶用バイオ燃料やSAF燃料の原料として使用される(同社発表2025年6月18日)。

RESの導入を促進する動きも見られた。サンクトペテルブルクに本社を置く銀行「ロシア」のタチアナ・ポリンコ会長と、RESの導入を支援している再生可能エネルギー開発協会のアレクセイ・ジハレフ専務理事は18日、国内でRESの導入を推進するための協力協定を締結した。ジハレフ専務理事によると、ロシアは2042年までに18ギガワット(GW)以上のRES発電設備を導入する予定だ。しかし、1兆5,000億ルーブル(約2兆7,000億円、1ルーブル=約1.8円)以上の大規模な投資が求められ、銀行の協力が必要だと強調した(「実業ペテルブルク」2025年6月18日)。

(小野塚信)

(ロシア)

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