公立校の授業料無償化へ、少子化対策の一環
(ベトナム)
ホーチミン発
2025年07月24日
ベトナム国会は6月26日、幼児教育から高校までの公立校の授業料を無償とする決議217/2025/QH15を承認した(注)。この決議は同日施行され、2025~2026年の学年度から授業料の免除を適用する。対象者はベトナム国民、ベトナムに居住する国籍未確定のベトナム出身者で、公立教育機関に通う幼児から高校までの生徒だ。私立の教育機関に通う生徒に対する授業料支援も、政府が定める授業料の範囲内で各省・市の人民評議会が決定する。
ベトナムでは2024年の合計特殊出生率が過去最低の1.91となるなど、都市部を中心に少子化が進んでいる(2025年2月18日記事参照)。出生率低下の対応策として6月には、夫婦の子供を2人までとする規定を廃止する人口法令第10条を改正した(2025年6月17日記事参照)。また、少子化の要因として、生活費や住居費、教育費などの子育て費用の高騰も挙げられている。
政府によると、2023~2024年度の全国の生徒数は2,320万人、そのうち公立校の生徒は2,150万人(全体の93%)、私立校の生徒は170万人(7%)だった。生徒数の内訳では、幼児教育480万人(公立380万人、私立100万人)、小学校880万人、中学校650万人、高校299万人となっている。政府の試算では、全国の幼児教育から高校3年生までを対象とした授業料無償化の実施に必要な総予算は30兆6,000億ドン(約1,713億6,000万円、1ドン=約0.0056円)を見込む(「キンテ&ドーティ」紙6月26日、VNエクスプレス6月26日)。
教育訓練省の2021~2023年の統計によると、ベトナムの18歳~22歳の年齢層の大学進学率は27.9%~30%で、上位中所得国平均の37%を下回る。例えば、ASEANではタイ34.8%、シンガポール54.9%、欧米ではドイツ44.2%、英国44.4%、米国46%となっている。ベトナムでは近年、大学の授業料高騰が懸念され、多くの大学が2025~2026年度の授業料の値上げを発表している(ハノイ市とホーチミン市の主な大学の年間授業料は添付資料表参照)。標準課程の授業料値上げは年間100万~400万ドンとなる見込みで、大学によって年間最大10~15%値上げする見込みだ(「知識と生活」2024年11月、ダンチ4月3日)。
(注)ベトナムの教育システムは、幼児教育が生後3カ月~6歳、小学校は5年間、中学校は4年間、高校は3年間。うち義務教育は小学校5年間。
(新田和葉、ティエン・グエン)
(ベトナム)
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