二人っ子政策を廃止、出生率低下や男女比不均衡の対応案模索
(ベトナム)
ホーチミン発
2025年06月17日
ベトナム国会常務委員会は6月3日、夫婦の子供を2人までとする規定を廃止するため、人口法令第10条を改正する法令を可決した。新しい規定により、夫婦や個人は年齢や健康状態、学習・労働条件、収入、育児能力などに応じて、出産の時期や子供の人数、出生間隔を自由に決定できるようになる。社会経済状況の変化に伴い、出生率が低下する中、規定も見直したかたちだ。
ベトナム統計局によると、ベトナムの合計特殊出生率は2009年から2022年まで、人口置換水準の2.1付近で推移し、比較的安定していた。しかし、2023年は1.96と同水準を下回り、2024年の合計特殊出生率は過去最低の1.91となった(2025年2月18日記事参照)。特に南部ホーチミン市は1.39と国内で最も低く、それ以外でも都市部を中心に、同出生率の低下が進んでいる。ベトナムは2039年に人口ボーナス期を終え、2042年に生産年齢人口(15~64歳)はピークに達し、2054年以降は人口が減少に転じる可能性があると予測されている(VNエクスプレス6月3日)。
政府は少子化と同様に、男女比の不均衡も問題視している。保健省によると、世界では女児100人に対して男児の出生数は103~107人が標準的な値とされるが、ベトナムは2006年が109.8人、2015年が112.8人、2024年が111.4人と不均衡が拡大している。男女出生比の不均衡は北部の省、特に紅河デルタ地域に集中しており、同地域11省のうち10省で110人を上回った。最大はバクニン省の119.6人で、ビンフック省118.5人、ハノイ市118.1人、フンイエン省116.7人が続く。北部丘陵山岳地域でも男児の比率が高いが、南部では105~108人と標準的な男女出生比に近い水準を保っている。男女出生比が現在のままであれば、2039年には15~49歳の男性の数が女性の数よりも150万人多くなり、2059年には250万人まで拡大する可能性があるという(VNエクスプレス5月6日、保健省電子ポータルサイト6月3日)。
保健省は人口法改正案の中で、男女比の不均衡を防ぐために、胎児の性別選択に対する罰金を現行の上限3,000万ドン(約16万8,000円、1ドン=約0.0056円)から1億ドンに引き上げることを提案している。
(新田和葉、ティエン・グエン)
(ベトナム)
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