「大きく美しい1つの法案」が米上院を通過、下院の再可決への道筋はなお不透明
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月02日
米国連邦議会上院は7月1日、下院で可決されていた「大きく美しい1つの法案」(2025年5月23日記事参照)の修正案を、賛成51、反対50で可決した。共和党からスーザン・コリンズ議員(メーン州)、ランド・ポール議員(ケンタッキー州)、トム・ティリス議員(ノースカロライナ州)の3人が反対票を投じたため、議員票では賛否同数だったが、規定に従いJ.D.バンス副大統領が賛成票を投じたことにより可決にこぎつけた。
同修正案は下院に送付され、再度可決する必要がある。しかし、修正に伴う財政赤字のさらなる拡大など、財政強硬派から反発の強い内容も盛り込まれていることから、トランプ政権が求める7月4日までの法案成立が実現するかどうかは、なお微妙な情勢だ。上院財政委員会が6月に示した案(2025年6月19日記事参照)からの主要な変更点は次のとおり。
(1)メディケイド:上院財政委が示していた医療提供者税の引き下げ措置は維持するが、これが地方病院の経営に影響することを防止するため、地方病院基金を設置し、5年間で500億ドルを措置する。
(2)個人向け減税:州税に係る税額控除幅(SALT)について、2025年は上限を4万ドルと下院案と同じ規模に戻し、2029年まで控除幅をさらに1%ずつ拡大する(2030年以降は1万ドルに据え置き)。
(3)インフレ削減法(IRA)に基づく税額控除の見直し:クリーン電力生産クレジット〔内国歳入法(IRC)45Y〕、クリーン電力投資クレジット(IRC48E)は、太陽光・風力発電に関して、2027年12月31日までの供与開始を求める条項などを追加。下院案と比べて供与開始時期が1年間前倒しとなった。また、先端製造業生産クレジット(IRC45X)に関しては、重要鉱物として冶金(やきん)用石炭が新たに追加され、税額控除額は段階的に削減されていくものの、2033年まで税額控除の対象となった。
(4)不当な外国税に対する報復税制(Sec.899):上院財政委の案でも盛り込まれていた同条項は、G7諸国がグローバル・ミニマム課税の対象から米国企業を外すことに合意したことを受け、法案からは削除された。
(加藤翔一)
(米国)
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