メキシコ、日本製スチレン・ブタジエンゴムのAD税を5年間延長

(メキシコ、米国、韓国、日本)

調査部米州課

2025年06月03日

メキシコ政府は5月29日、2024年1月から実施していた米国、韓国、日本を原産国とするスチレン・ブタジエンゴム(SBR)に関するアンチダンピング(AD)税の適用期間延長審査を終了し、3カ国を原産国とするSBRに対し、従来のAD税を5年間継続適用することを決定した。日本製のSBRに対しては、1キログラム当たり0.23556ドルのAD税が2029年1月25日まで課税される。

米国、韓国、日本製のSBRに対するAD税は2019年1月28日に適用開始され、2024年1月28日に適用が終わる予定だった(2019年1月29日記事参照)。WTOのAD協定とメキシコの貿易法の規定に基づき、2023年12月に国内唯一の生産者のネグロメックス(Negromex)がAD税適用延長審査の開始を要請し、それに基づくかたちで2024年1月25日に延長審査が開始された(2024年1月26日記事参照)。経済省は延長審査完了の決定文書で、対象生産国のSBR生産能力と輸出余力、対象3カ国からの輸入がAD税課税下にあっても増えたことなどを考慮し、AD税を撤廃した場合はさらに輸入が増加することで、国内市場に悪影響を及ぼすことを懸念して課税を決定したとしている。延長審査で経済省は、AD税撤廃を望む輸出者や輸入者などの関係者に対して、関連情報の提供機会を設定したが、それに応じた関係者は1社もなかった。そのため、経済省はWTOのアンチダンピング協定の第6.8条に基づき、「知ることができた事実(facts available)」に基づく判断をし、生産者のネグロメックスの主張を全面的に採用して延長を決定した。メキシコ中央銀行の貿易統計によると、2024年のメキシコのSBRの輸入量は5万5,431トン、そのうち日本製は307トンで全体の0.6%にすぎないため、課税延長の影響は軽微とみられる。

日本産品に対するAD税は2品目のみ

5月末時点で日本製の産品に対してAD税を課しているのは、SBR以外では、過去4回にわたって適用期間が延長されてきた継ぎ目なし鋼管(2020年11月9日記事参照)だけだ。ただし、商社など日系企業数社がメキシコに輸入しているベトナム製亜鉛メッキ鋼板に2023年2月からAD税を課税しており、5月28日に同税率(注)の見直しプロセスを官報に公示した。AD税の税率変更で影響を受ける関係者は、官報公示翌日から28営業日以内に経済省に必要な情報を提供する機会が与えられる。経済省の国際通商措置ユニット(UPCI)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから、情報提供のフォーマット(輸出者用外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます輸入者用外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)をダウンロードできる。

(注)現時点では、ベトナム側の輸出者に応じて、2.06~10.84%のAD税が課されている。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、韓国、日本)

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