スチレン・ブタジエンゴムのAD調査、日本など3カ国産にクロ判定

(メキシコ、日本、米国、韓国、ポーランド)

メキシコ発

2019年01月29日

メキシコ経済省は1月25日、2017年8月から開始している米国、ポーランド、韓国、日本を原産国とするスチレン・ブタジエンゴム(SBR)に関するアンチダンピング(AD)調査(2018年9月18日記事参照)の最終決定文書を官報公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

官報公示された経済省国際通商措置ユニット(UPCI)の文書によると、ダンピング輸入の調査対象期間として設定された2015年11月1日~2016年10月31日に、米国、韓国(LG化学の製品を除く)、日本から不当に低い価格でSBR輸入が行われ、メキシコ国内の同種産品の生産活動に悪影響を与えたことを示唆する十分な要素が存在するとし、米国産のSBRに1キログラム当たり0.34075ドル、韓国産に0.11378ドル、日本産に0.23556ドルのAD税を課税すると決定した。AD税の適用は官報公示の翌営業日の1月28日から5年間となる。なお、韓国のLG化学が生産するSBRとポーランド産のSBRはダンピングが行われていなかったとし、AD税の課税はない。

UPCIの文書によると、調査過程においてタイヤメーカーなどの輸入者は、メキシコ国内におけるSBRの生産者がネグロメックス(Negromex)1社しかなく、AD税が課税されると同社の独占的な立場が強まり、市場の競争環境が悪化すると主張し、AD税を課税する場合でもダンピングマージン以下の税率にするよう求めていた。しかし、経済省は、メキシコ市場が世界に開かれた市場であることを考慮すると、AD税の課税がメキシコ市場へのSBRの供給量を減少させ、ネグロメックスの市場占有力を高めることはなく、またダンピングマージン以下の課税では、ダンピングによりゆがめられた市場価格を是正し、国内産業への悪影響を排除するには不十分とし、それぞれ国の国内市場販売価格(正常価格)と輸出価格の差を基に算出されたダンピングマージンに基づき、課税を決定した。

従価税換算で日本産は6.2~8.7%程度の負担に

メキシコの通関統計によると、2018年1~10月の日本産SBRの1キログラム当たりの輸入平均価格は、HS4002.19.02に分類されるものが2.72ドル、4002.19.99に分類されるものが3.82ドルだ(HS4002.19.01および4002.19.03の過去2年の輸入実績はない)。これを基に今回決定されたAD税を従価税に換算すると、前者が約8.7%、後者が約6.2%に相当する。なお、米国産品の場合は輸入平均価格が日本産品より低いこともあり、12.6~16.0%のインパクトがある。韓国製については、輸入平均価格は低いものの、決定されたAD税額(ダンピングマージン)も小さいため、従価税に換算すると約5.0~5.7%に相当する。

(中畑貴雄)

(メキシコ、日本、米国、韓国、ポーランド)

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