米メタ、AI電力需要に対応し、20年間の原子力発電の購入契約を締結
(米国)
サンフランシスコ発
2025年06月09日
米国ソーシャルメディア大手のメタは6月3日、人工知能(AI)関連事業の電力需要拡大に対応するため、米電力大手コンステレーションと20年間にわたる原子力発電の購入契約を締結した。これにより、イリノイ州のクリントン・クリーン・エネルギー・センター(旧称:クリントン原子力発電所)から20年にわたり原子力で発電された電力を調達することになる。2027年から1,121メガワット(MW)の二酸化炭素(CO2)排出のない電力を地域の電力網を通じて調達する計画だ。また、本契約により、同発電所の継続稼働が確保され、地元での1,100人を超える雇用が維持されるほか、年間1,350万ドルの税収がもたらされる。これらは、住民の電気料金の負担を増やさずに実現されることとなる。
メタのグローバル・エネルギー部門責任者ウルビ・パレク氏は「AIの進展には、常時、安定的に供給可能なクリーンエネルギーが不可欠」と述べ、今後もAI対応データセンター向けの電力確保に向けた投資を強化する方針を示した。
同社はエネルギー戦略の一環として、1〜4ギガワット(GW)規模の新規原子力発電の確保に向けた提案募集(RFP)も進めており、2024年に開始されたRFPには、小型モジュール炉(SMR)を含む次世代炉を提案する公益事業者、原子力技術企業などから50件以上の応募が寄せられている。現在、複数の州での開発を視野に最終選考が行われている。
米国ではAIデータセンターの拡大に伴い、今後数年で電力需要の急増が予測されており、安定供給と脱炭素を両立できる電源として原子力への関心が再び高まっている。メタに加え、マイクロソフトは2023年にペンシルベニア州スリーマイル島原発との電力購入契約を締結(2024年9月24日記事参照)、アマゾンやグーグルもSMRなど次世代原子炉への投資を進めている(2024年10月17日記事参照)。オープンAIの創業者で最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏は、自ら設立した原子力企業オクロの会長職を辞任し、オープンAIとの将来的な提携に向けた体制を整えている。
(松井美樹)
(米国)
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