ミュンヘン市、「イノベーション・アジェンダ2030」発表
(ドイツ)
ミュンヘン発
2025年06月04日
ドイツ南部のミュンヘン市は5月22日、世界レベルのスタートアップエコシステムと人工知能(AI)の拠点都市としての存在感を高めるため、「イノベーション・アジェンダ(Innovationsagenda)2030」を発表した。同アジェンダはミュンヘン・オーバーバイエルン商工会議所や、ミュンヘン・イノベーション・エコシステム(2023年12月18日付地域・分析レポート参照)、国際的スタートアップ支援機関のStart2Groupなどが産学官との協力で作成したものだ。
「イノベーション・アジェンダ2030」は、(1)急速に成長し、国際的な企業になる手前のスケールアップ企業への支援拡大、(2)欧州レベルのAIハブ設立、(3)循環型ビジネスを促進するゼロ・ウェイスト・イノベーションハブの設立、(4)社会におけるイノベーション文化創造への取り組み強化、(5)ミュンヘン市の欧州での主要なイノベーション拠点としての位置付けという5本柱を据え、2030年までのミュンヘン市の技術振興や拠点としての魅力の向上などを目指す。
ミュンヘン・オーバーバイエルン商工会議所のマンフレッド・ゲッセル所長によると、(1)スタートアップから急速に成長するスケールアップ企業への支援拡大には、ビザの手続きや、生産拡充に必要な許可取得、輸出証明書の取得などの簡素化を含む(「南ドイツ新聞」5月21日)。併せて、商工会議所とバイエルン州経済・開発・エネルギー省(StMWi)、ミュンヘン市はスケールアップによる問い合わせやネットワーク構築に対応するドイツ初の「スケールアップ協議会(Scale-up Council)」を設立し、ベンチャーキャピタル(VC)の拡大を計画している。具体的には、StMWiのVCファンドは1,000万~5,000万ユーロの投資を行う予定だ。
また、(2)「ハウス・オブ・AI(House of AI)」ハブの設立により、バイエルン州のAI技術の急速な進歩と広範な普及を目指している。同ハブは産学官のプラットフォームの役割を担い、州全体のAI関連活動を調整し、窓口となる。ミュンヘン市に設置するキャンパスのほか、専門家間の情報交換や協力のためのオンライン・キャンパスも設ける。
バイエルン州の2024年のスタートアップ起業件数は550件で、国内最大だった(2025年5月12日記事参照)。今回のアジェンダ発表により、バイエルン州都ミュンヘン市は、現地のスタートアップがスケールアップに成長するための枠組み整備を促進する。
(クラウディア・トーディ)
(ドイツ)
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