ギリシャ経済、EU復興基金による投資拡大と内需で堅調
(ギリシャ、EU)
ミラノ発
2025年06月13日
欧州委員会が5月19日に発表した「春季経済予測」では、ギリシャ経済は、2025年に前年比2.3%、2026年に同2.2%の実質GDP成長を見込む(2025年5月28日記事参照)。
2024年は、主に民間消費、投資、在庫の積み増しにより支えられ、実質GDP成長率は前年比2.3%となり成長を維持した。緊縮財政にもかかわらず、国内需要と輸入が増加した。一方、輸出の伸びは鈍化した。
2025年、2026年の経済成長は、特にEUの復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)計画(2024年10月22日記事参照)の進展にともなう投資の大幅増加と、持続的な所得増加による堅調な消費に牽引される見込みだ。ギリシャは同EU基金を活用し、再生可能エネルギー、エネルギー効率向上、森林再生などによる脱炭素化や、行政と教育・医療のデジタル化や中小企業のデジタル移行などへの投資を進めており、2025年5月時点でEUから計画の59%に相当する213億ユーロが拠出されている。
労働市場は近年、改善傾向にあり、2025年通年では失業率9.3%を見込む。技能不足や女性の労働参加率の低さが労働供給を制限するものの、雇用は拡大を続ける。さらに最低賃金の引き上げや社会保険負担軽減の後押しにより、従業員1人当たりの実質賃金は、今後2年間は平均で年間1.3%上昇する見込みだ。
欧州の統一基準に照らした2024年の消費者物価指数(HICP)の平均上昇率はユーロ圏平均を上回る3.0%。2025年は2.8%、2026年は2.3%と緩和される予測だが、賃金が物価上昇に圧力をかける。
2024年の政府の一般財政収支は、見通しから大幅に改善し、GDP比1.3%の黒字に転じた。支出の伸びの鈍化に加え、税収の増加や、脱税、非申告労働への対策が奏功し、社会保障拠出金からの収入にも支えられた。2025年、2026年も黒字を継続する見込みだ。これらに支えられ、公的債務のGDP比率は、2025年に146.6%、2026年に140.6%に低下すると見込まれる。
IMFは、2025年3月に行われたギリシャとの執行理事会協議において、ギリシャ経済の継続的かつ堅調な拡大、短期的な経済見通しの改善、財政健全化や構造改革の進展を歓迎しつつも、適切な政策ミックスの実施や、より野心的で包括的な構造改革、優先順位をつけた公共投資の推進などを推奨した。
一方、現地調査会社メトロン・アナリシスが5月に発表した全国世論調査の結果では、過去1年間で家計の収支状況が悪化したと回答した人がほぼ半数に上り、一般世帯の家計不安を示すものとなった。住宅の不足や価格高騰などによる経済的苦境のほか、喫緊の課題としてインフレや生活費高騰などが国民の懸念として挙げられた(現地オンラインニュースサイト「Dニュース」5月23日)。
(井上友里、山本千菜美)
(ギリシャ、EU)
ビジネス短信 b60ef675ffe29247