欧州産業界、拡大生産者責任枠組みのルールの調和やデジタル化推進を要請
(EU)
ブリュッセル発
2025年06月18日
欧州繊維産業連盟(EURATEX)など欧州の7産業団体は6月10日、共同声明を発表し、製品の廃棄やリサイクルに関する拡大生産者責任(EPR)枠組みについて、EUレベルでのルールの調和とデジタル化の推進をEUに要請した。
欧州委員会は、5月21日に発表した単一市場戦略(2025年6月6日記事参照)において、EPRに関するルールが単一市場内で細分化し、複数のEU加盟国で事業を展開する企業の障壁となっており、行政手続きに係るコスト負担も大きいと指摘した。
EPR枠組みでは、企業は各加盟国や製品ごとに異なる報告要件などを確認し、各加盟国当局への登録や関連団体への報告、費用の負担が必要となる。7団体によると、例えばEUレベルでEPRが義務付けられている包装、バッテリーと電子機器を扱う事業者は、EU全加盟国で事業を展開する場合、81の異なる手順を同時並行で管理する必要がある。2月にEUレベルでEPRが義務化されることで合意に達した繊維製品(2025年2月21日記事参照)を扱う場合は、手続きの数は最大で108に上り、EPR枠組みは複雑化している。
欧州委は単一市場戦略において、「クリーン産業ディール」(2025年3月4日記事参照)で2026年第4四半期(10~12月)発表予定とした循環型経済法案に、EPR関連行政手続きを一括する「デジタル・ワンストップショップ(OSS)」の導入を盛り込むほか、報告回数の削減といった簡素化を進めると表明した。
7団体はOSS導入の方針を歓迎し、EUおよび加盟国で義務付けられる全てのEPR枠組みにおける手続きの単一窓口とすべきと提言。そのうえで、OSSの効率性および利便性を最大化するため、(1)域内のあらゆるEPR制度に関する必要な情報にアクセスできること、(2)企業が登録・報告するデータなどを収集して統合し、さらに人工知能(AI)を活用して書式を整えることを可能とし、加盟国当局や関連団体への登録・報告・支払いを円滑化すること、(3)API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を通じ、既存および今後登録されるものも含め、各国のEPRの登録簿を統合し、当局などによる検査や監査を容易にすることが必要だとした。
また、EUに対し、OSSの中立性や信頼性を十分に担保するべく、循環型経済法案において法的根拠を確立することに加え、既存のものも含めEPR登録簿をデジタル化し、循環型経済法案や関連法令を通じ、EUレベルでEPR枠組みの主要部分を可能な限り統一していくことを要請した。
(滝澤祥子)
(EU)
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