中国企業のデータセンター利用、マレーシアMITIが国内法違反の有無を調査

(マレーシア、米国)

クアラルンプール発

2025年06月23日

マレーシア投資貿易産業省(MITI)は6月18日、米国半導体大手エヌビディア(NVIDIA)製半導体に関する報道を巡り、国内での違法な事業活動や取引への関与につき、断固容認しないとする声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。6月12日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが、中国企業の技術者が2025年3月に大容量データを搭載したハードドライブをマレーシアに持ち込み、現地データセンターで大規模言語モデル(LLM)の訓練を行っていたと報道。同データセンターは、対中輸出規制の対象であるNVIDIAの先端AIチップを装備していた。これを受けMITIは、関係機関と連携し、国内法や関連規制への違反の有無について調査を進めている。MITIは3月にも、NVIDIA製半導体がマレーシアを迂回し中国へ輸出された疑惑を受け、貿易管理を強化する意向を表明していた(2025年3月7日記事参照)。

MITIは声明で、先端AIチップを搭載したサーバー自体は、2010年戦略貿易法(マレーシアの貿易管理制度参照)に基づく規制品目に該当しないと説明。また、同法を含め、マレーシア国内法を順守しながら、透明性や良好なガンバナンスを確保し事業展開する限り、データセンターを含む各企業はおのおのの商業上の意思決定を自由に行うことができるとも強調した。

その一方でMITIは、輸出規制を回避したり、違法な貿易活動に従事したりしようとする個人や企業に対しては、断固たる姿勢で臨むとも表明した。国際貿易規制や世界的な輸出管理措置を順守するとともに、各国のセンシティブ品目の管理につき必要であれば協力するとし、暗に米国を支援する用意があるとも述べた。国内企業に対しては、マレーシアとして一方的制裁に対し中立の立場を維持すると繰り返し表明しつつ、企業が他国の輸出規制を無視して事業展開することで思わぬ制裁を受けることのないよう、同規制を適切に順守するよう求めた。

関税を巡る米国との交渉において、貿易管理も重要な焦点である中(2025年5月7日記事参照)、マレーシア政府は、米国を含む主要相手国との信頼関係を維持すべく、慎重かつ協調的な姿勢で対応に努めていることがうかがえる。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、米国)

ビジネス短信 4c02211b3b67a65a