マレーシア政府、米半導体の迂回輸出疑惑受け声明発表、監視強化へ
(マレーシア、シンガポール、米国)
クアラルンプール発
2025年03月07日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は3月4日、米国の輸出規制対象である人工知能(AI)チップの貿易に関し、米国およびシンガポールとの連携を強化するとの声明を発表した。米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の先端半導体が、シンガポールからマレーシアを経由して中国へ迂回輸出された疑惑を受けてのもの。
マレーシア政府は、3月3日にシンガポールで報じられた先端半導体の密輸疑惑を受け(注)、シンガポールからマレーシアへの輸送に関し、マレーシア法への違反があったかどうか事実確認を進めるとともに、米国およびシンガポールと緊密に連携し、制裁対象製品の不法貿易に対処するための有効な対策を模索すると、MITIは説明した。
加えてMITIは、マレーシアが貿易に関する多国間法規を順守・尊重し、2010年戦略貿易法に基づき戦略品目の輸出や輸送、積み替え、仲介を監視・管理するための強力な体制を整備していることをあらためて強調。輸出規制を回避したり、違法な貿易活動に従事したりする個人や企業に対し、断固たる姿勢を貫くと強調した。
他方で、マレーシアとしては一方的制裁に中立的な立場を維持しているとも指摘。マレーシアで事業展開する企業には、自社の商品やサービスに対する制裁を回避するため、国際的な事業活動に適用される他国の輸出規制には注意を払うよう促した。
この関連で、マレーシアでEMS(電子機器の受託製造)を手がける地場ネーションゲート・ホールディングスは3月4日、迂回輸出への関与を否定した。同社の株価が前日に不自然に急落したことを受け、マレーシア証券取引所が未公表事実の有無を同社に照会していた。ネーションゲートは、株取引に影響を与える未公表の事実はないとした上で、「当社は進行中の疑惑とは一切関係がない」と強調した。
マレーシア政府、米国と対話の用意
なお、マレーシアのザフルル・アジズ投資貿易産業相は2月24日、米国の関税攻勢への対応として同国を訪問する方針を明らかにしていた。マレーシアの米国経済への貢献を米政府関係者に説明し、影響回避を図りたい考え。米国は現在、マレーシアにとり、中国を上回る最大の輸出相手国だ(2025年2月10日記事参照)。ザフルル氏は「マレーシアやASEANとの協調が米国に裨益(ひえき)する、と説明する必要がある」と述べた。
(注)先端半導体がシンガポール経由で中国へ迂回輸出された可能性について(2025年2月3日記事参照)、シンガポールのK・シャンムガム内相兼法相は3月3日、半導体の輸出先がマレーシアだったと明らかにした。同氏は、米デル・テクノロジーズと米スーパー・マイクロ・コンピューター製サーバーに搭載されたかたちで、半導体が輸出された可能性が高いと説明。ただし、マレーシアが最終輸出先だったかどうかは「現時点では不明」としていた。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、シンガポール、米国)
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