AESC、米サウスカロライナ州のバッテリー工場建設を一時中断
(米国、中国、日本)
アトランタ発
2025年06月10日
中国の再生可能エネルギー開発大手エンビジョングループ傘下のバッテリー企業AESC(本社:神奈川県座間市、旧エンビジョンAESC)は6月5日、米国サウスカロライナ州フローレンス郡のバッテリー工場建設の一時中断を発表した、と複数の米国メディアが報じた。今回の決定は政策と市場の不確実性によるもので、状況が安定すれば建設再開できると見込んでいるとのことだ。
AESCは2022年12月、フローレンス郡に8億1,000万ドルを投じる電気自動車(EV)用バッテリー工場建設を発表した。2023年12月に8億1,000万ドル、2024年3月には15億ドルの追加投資による拡張を発表。総投資額は31億2,000万ドル、2,700人を雇用予定で、2027年の操業開始を予定していた(2022年12月13日、2023年12月18日、2024年4月1日記事参照)。BMWとの複数年にわたるパートナーシップの一環として、BMWの同州スパータンバーグ工場で生産される次世代EV用のバッテリーセルを供給するほか、BMWグループのメキシコ組立工場にもEV用のバッテリーコンポーネントを供給することを計画していた。
AESCは2025年2月、15億ドルの追加投資による第2工場建設計画の保留を発表したものの(注)、着工済みの第1工場は2026年操業開始予定で建設が進められていた。しかし、今回の発表により、第1工場の建設も中断することとなった。同社の広報担当ブラッド・グランサム氏は「今後数年間で16億ドルを投資し1,600人の雇用を創出するというコミットメントを全力で果たすつもりだ」と述べたが、新たなスケジュールについては明言しなかった。なお、納入予定先の1つのBMWが同州ウッドラフで建設中の高電圧バッテリー組立工場について、2026年完成予定のスケジュールは2025年6月9日時点で変更されていない。
今回の決定について、同州のヘンリー・マクマスター知事(共和党)は、5月29日にボルボが部品不足のために同州リッジビル工場での生産を一時見合わせたことに触れ、「そのような事態は避けたいが、一時中断は問題ない」と述べた。
また、知事は、AESCがEV市場に影響を与える可能性のある関税および税制の変更をめぐる不確実性に直面していると指摘した一方、「ドナルド・トランプ大統領と同政権の目標は、力強い経済成長と繁栄を実現することであり、国際貿易体制の変革が必要であることは間違いない」「州や企業のリーダーたちがトランプ政権と協議しており、事態は解決するだろう」と述べ、安心するよう呼びかけた(AP通信6月5日)。
(注)同社は、第1工場の効率化による生産能力増加により、第2工場で予定していたメキシコのBMWグループ工場向けのバッテリー部品生産を第1工場に移管することを決定した。
(横山華子)
(米国、中国、日本)
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