オーストラリア外相、総選挙後初めて太平洋島しょ国を訪問
(オーストラリア、オセアニア)
シドニー発
2025年06月02日
オーストラリアのペニー・ウォン外相は5月20~22日にフィジー、トンガ、バヌアツの3カ国を訪問した。5月の総選挙で再び勝利し、2期目入りした労働党政権の外相による初めての太平洋島しょ国訪問となった。ウォン外相は、19日付のメディアリリースで、島しょ国ファミリーの一員として重要な地域であり、早期に訪問する必要があると、訪問の意義を強調した。島しょ国との関係を再確認する目的だった。
フィジーでは、シティベニ・リンガママンダ・ランブカ首相と会談し、「ブバレ・パートナーシップ」の強化(注1)、貿易協定、地域開発、気候変動対策などに関する協力について意見交換した。太平洋諸島フォーラム(PIF、注2)議長国のトンガでは、アイサケ・バル・エケ首相らと会談し、オーストラリアからの医療部門のインフラ支援や、PIFを含む太平洋島しょ国地域の安全保障について意見を交わした。バヌアツでは、ジョサム・ナパット首相を訪問し、2024年12月に起きた大地震のバヌアツ政府復興計画に対するオーストラリアの支援や、太平洋諸国経済緊密化協定(PACER Plus、2020年10月16日記事参照)などの貿易円滑化、「ナカマル・パートナーシップ協定」(注3)を通じた協力について意見交換した。
ウォン外相はまた、太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局(フィジー)で5月20日にスピーチを行い、「オーストラリアはこれからも信頼できるパートナーであり続ける。島しょ国の優先事項に配慮し、質の高いインフラ、技能、融資、予算支援を提供する」と協力継続を訴えた。喫緊の課題の気候変動対策では、島しょ国の要望事項を反映し、30億オーストラリア・ドル(約2,790億円、豪ドル、1豪ドル=約93円)の支援を2025年末までに行う予定と明らかにした。また、同地域で起きている気候変動の危機を世界に訴えるため、オーストラリアと島しょ国が2026年に行われる国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)の共同開催国に選ばれることへの期待を述べた。
現地で行われた記者会見で、米国の対外援助の停止決定による島しょ国への影響や、地域のリーダーとしてのオーストラリアの役割について問われたウォン外相は、オーストラリアの役割を真剣に捉えているとし、2025/2026年度予算案で島しょ国地域に対する開発援助(21億5,700万豪ドル)を過去最高の水準に引き上げたとした。ウォン外相は「リーダーシップを発揮していると思うオーストラリアは超大国ではないが、太平洋島しょ国ファミリーとして確かな貢献を果たしている」と説明した。
(注1)オーストラリアとフィジーが緊密な協力を行うための2国間パートナーシップで、2019年に両国が署名した。その後、島しょ国地域の情勢を踏まえて2023年に更新し、経済関係の強化、安全保障協力に関する項目など新たな協力項目を加えた。「ブバレ」とは、フィジー語で家族を表す言葉。
(注2)1971年に発足した枠組みで、大洋州諸国・地域首脳との対話の場と地域協力の核となっている。オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなど16カ国・2地域が加盟し,政治、経済、安全保障など幅広い分野で地域協力を行っている。
(注3)オーストラリアとバヌアツが2025年9月に署名を目指している2国間パートナーシップ。バヌアツのインフラなど地域開発、気候変動適応策、文化遺産の保全などを共同で取り組むもの。「ナカマル」とは現地語で、会議を行う場所を指す。
(青島春枝)
(オーストラリア、オセアニア)
ビジネス短信 451c195b3aaad58f