リーブス英財務相、今後数年間の歳出計画公表、防衛、保健、経済成長に重点
(英国)
ロンドン発
2025年06月13日
英国のレイチェル・リーブス財務相は6月11日、歳出見直し(Spending Review:SR)を公表した。SRでは、各省庁の予算に関し、日々の支出について2028年度(注)、資本投資については2029年度までの予算を設定している。全体の予算額の年平均伸び率(実質ベース)は2023年度から2029年度にかけて、2.3%増となっている。
SRでは「安全保障」「保健・公共サービス」「経済成長」「国家改革」を中心に、政策を打ち出している(主な政策は添付資料表参照)。
安全保障に関しては、2月に発表した国防費の拡大を確認し、2027年以降、対GDP比で2.6%に高めるとしたほか、インテリジェンス機関に追加投資を行うとした。これらにより、6月に発表した戦略防衛レビューの実行を支援するとしている。
保健・公共サービスについては、国営医療サービス(NHS)に対する予算を290億ポンド(約5兆6,550億円、1ポンド=約195円)増額した。また、NHSのデジタルトランスフォーメーション(DX)に対して、2028年度までに100億ポンドを投資するとしている。
経済成長に関しては、一部の大都市向けに、2031年度までに計156億ポンドを提供するほか、公営住宅の建設に390億ポンドを投じる。研究・開発に対しても増額し、2029年度までに年間226億ポンドを拠出するとしている(科学技術・テック分野の投資については、2025年6月13日記事参照)。このほか、地方への権限移譲の促進や一部の都市を対象とした成長基金の創設、自治政府への予算拡大など、地域を意識した政策も盛り込んだ。一方、生活コストの削減策として、無料給食の提供対象の拡大、住宅のエネルギー効率改善に向けた「ウオーム・ホームズ」計画への132億ポンドの追加投資、2024年7月に対象削減が発表された冬季の燃料代補助(2024年10月23日付地域・分析レポート記事参照)に関し、支給要件の緩和も発表した。
エネルギー関連では、サイズウェルC原子力発電所への142億ポンドの投資、小型モジュール炉(SMR)への25億ポンドの投資(2025年6月12日記事参照)のほか、二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)向けに、94億ポンドを追加で割り当てることを発表した。一方で、4月に対象候補のプロジェクトが発表された第2回水素アロケーションラウンド(HAR2、2025年4月16日記事参照)については、2026年第1四半期(1~3月)の支援提供に向けた契約締結を目指すとしており、当初の想定よりも後ろ倒しになっている。
(注)年度は4月始まり。
(山田恭之)
(英国)
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