5月の米小売売上高は前月比0.9%減と駆け込み需要の反動減が響く、消費者の先行き期待はやや改善

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月18日

米国商務省が6月17日に発表した速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、5月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.9%減の7,154億ドル(添付資料表参照)と1月以来の大幅な減少になり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.6%減)を下回った。なお、4月は0.1%増(速報値、2025年5月16日記事参照)から0.1%減に下方修正された。トランプ政権の関税措置による物価高騰の懸念を背景に、消費者の買い控えが進んでいることが示唆された。

自動車・同部品、建材・園芸用品などが押し下げ要因に

業種別にみると、前月比で最も売上高が減少したのは自動車・同部品で、3.5%減の1,358億ドル(寄与度:マイナス0.68)だった。自動車関税(2025年4月3日記事参照)の適用開始前の3月は消費者の駆け込み需要が進んだが、その反動減により4月、5月と2カ月連続で減少した。そのほか、ガソリンスタンドは燃料価格の下落に伴い2.0%減、建材・園芸用品は反動減と住宅関連需要の落ち込みに伴い、2.7%減となった。また、小売り統計で唯一のサービス項目であるフードサービスは、0.9%減の974億ドルで、3カ月ぶりにマイナスに転じた。他方で、無店舗小売り(0.9%増)や、衣料(0.8%増)、家具(1.2%増)などは増加に寄与した。

今回の結果について、バンクレートのシニア業界アナリスト、テッド・ロスマン氏は「春先の高い伸びは、関税引き上げ前の駆け込みによるところが大きい」とし、「米国人は、すぐに値上がりすると懸念していた自動車や家具などを買いだめした。多くの関税が延期または撤回されたことに加え、本来であれば5月に発生するはずだった需要の一部が1~2カ月前倒しされたこともあり、5月にはそれほど多くの買い占めは見られなかった」と述べた(リテールダイブ6月17日)。

このように、足元では消費者の買い控えが見られる一方、先行きに関する消費者の見方は前月より改善している。民間調査会社コンファレンスボードが5月27日に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした5月の消費者信頼感指数は98.0(4月:85.7)と大幅に上昇した。今回の調査の締め切りは5月19日で、米国と中国が追加関税の引き下げで合意したことが一部反映されたもようだ。内訳では、特に6カ月先の景況見通しを示す期待指数が72.8(4月:55.4)と基準値の80は下回ったものの、前月から17.4ポイントと大幅に上昇した(添付資料図参照)。

同社のグローバル指標担当シニアエコノミスト、ステファニー・ギチャード氏は、今回の改善は消費者の期待感の高まりが主な要因と指摘し、株価見通しの改善や今後の関税交渉の進展などへの期待が後押ししているとの見方を示した。ただし、アンケートでは、消費者が引き続き関税による価格上昇や経済への悪影響を懸念しているほか、所得による消費行動や貯蓄状況の違いも浮き彫りになっている。また、関税による価格上昇は、今後数カ月間で顕著に発現する可能性が指摘されており(2025年6月5日記事参照)、今後も消費者マインドの改善が続くかどうかは、なお予断を許さない。

(樫葉さくら)

(米国)

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