4月の米小売売上高は前月比0.1%増、関税導入前の駆け込み需要に反動減の兆し
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月16日
米国商務省の速報(5月15日付)によると、4月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.1%増の7,241億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(横ばい)をわずかに上回った。なお、3月は同1.4%増(速報値、2025年4月18日記事参照)から1.7%増に上方修正され、同月におけるトランプ政権の関税導入を見越した消費者の駆け込み需要が一段落し、4月は反動減を含め消費者の買い控えが進んでいることが示唆された。
フードサービスは押し上げに寄与するも、スポーツ用品や衣料品などは減少
業種別にみると、フードサービスは前月比1.2%増の991億ドル(寄与度:0.16ポイント)と2カ月連続で増加したほか、建材・園芸用品(同0.8%増)も増加したが、それ以外は総じて低調だった。家具(同0.3%増)、家電(同0.3%増)、無店舗小売り(同0.2%増)の伸びの一部は価格上昇の影響を受けた可能性もある(2025年5月14日記事参照)。また、スポーツ・娯楽品・書籍(同2.5%減)や衣料品(同0.4%減)、自動車関税(2025年4月3日記事参照)の適用開始前に消費者の駆け込み需要が進んだ自動車(同0.1%減)の販売などは、反動減により前月比でマイナスに転じた。
今回の結果について、コンサルティング会社EYパルテノンのシニアエコノミスト、リディア・ブスール氏は「関税を見越した消費者の駆け込み後、買い控えが起こったことが示唆された」とした上で、「今後はインフレが再加速し、金利が高止まりする中で、消費者は支出をより選別し、慎重になるだろう」と述べた。衣料品のEC(電子商取引)サイトを手掛ける中国発のSHEIN(シーイン)など、トランプ政権の関税によるコスト増への対応策として値上げをする企業は相次いでおり、米小売り最大手のウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は、価格を低く抑えるため最善を尽くすと述べたものの、「関税の規模を考慮すると、小売りマージンが少ないことから全ての圧力を吸収することはできない」と指摘した(AP通信5月16日)。
消費者マインドは引き続き悪化しており、民間調査会社コンファレンスボードが4月29日に発表した4月の消費者信頼感指数は86.0(3月:93.9)と5カ月連続の低下で、2020年5月(85.9)以来の低水準となった。現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は133.5(3月:134.4)と前月から0.9ポイント低下した。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は54.4(3月:66.9)は12.5ポイント低下し、2011年10月以来の低水準で、景気後退を示唆する基準値の80を大きく下回った(添付資料図参照)。
同社のグローバル指標担当シニアエコノミスト、ステファニー・ギチャード氏は「この下落は主に消費者の予想によるもので、景況感、雇用見通し、将来の収入の3つの予想項目は全て急激に悪化し、将来に対する悲観的な見方が広がっていることを反映している」とした。「特筆すべきは、今後6カ月間に雇用が減少すると予想する消費者の割合(32.1%)が、リーマン・ショックにあった2009年4月とほぼ同水準に達したことだ」と指摘した。記述式の回答では、関税への言及が過去最高の水準を記録した。
(樫葉さくら)
(米国)
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