米ニューヨーク連銀、関税コストの転嫁状況や企業の対応手法の調査結果を発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月05日

米国のニューヨーク連銀は6月4日、関税引き上げに伴う価格転嫁の状況について独自の調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。調査は5月2日から9日までの期間、ニューヨーク州およびニュージャージー州の企業を対象に行われた(注)。

まず、今回の調査では、製造業のうち約90%、サービス業のうち約4分の3の企業が何らかの物品を輸入していることがわかった。これらの物品に対して、平均して、製造業では約35%(6カ月前より25ポイント上昇)、サービス業では約26%(同17ポイント上昇)の関税を支払ったと推定されている。米国内のサプライヤーへの切り替えや、海外のサプライヤー側での値下げなどが行われたため、対象品目のコスト上昇は製造業では約20%、サービス業では約15%の伸びにとどまった。

これらのコストについては、4分の3の企業が一部または全部を顧客に転嫁したとしている。製造業、非製造業ともに100%転嫁したと回答した企業が最も多かった(添付表1参照)。また、関税が賦課されてからどの程度のスピードで転嫁したか(またはする予定か)という点については、製造業では1~3カ月との回答が27%と最も多く、サービス業では1日、1~3カ月がともに25%で最も多かった。いずれもおおむね3カ月以内に価格転嫁を実施している(添付表2参照)。

関税引き上げに伴うコスト増への対応方法に関しては、上記の価格転嫁のほか、純利益の縮小(製造業・サービス業ともに約4割)、在庫の調整、調達先の変更などが主な手法とされる。人員削減も、各社における削減数自体は小幅ではあるものの、約2割の企業でみられた。また、設備投資については、製造業では増加させた企業と減少させた企業がいずれも10%程度とほぼ拮抗(きっこう)したが、サービス業では約25%の企業が減少させている。

(注)本調査は、125%まで引き上げた中国への相互関税の廃止および5月末の米国際貿易裁判所による一連の関税政策に対する判決の前に実施されている。

(加藤翔一)

(米国)

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