トランプ政権下でEV普及は大幅に減速、ブルームバーグやIEAが見通しを発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月19日

エネルギー関連の調査を行うブルームバーグNEFは6月18日、年次レポート「電気自動車の見通し2025PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表し、2030年時点における米国のライトビークル(乗用車・小型トラック)販売に占める電気自動車(EV、注1)の割合が27%にとどまるとの見通しを示した。2024年時点の予測値48%から大幅な下方修正となる。この見通しには、2025年6月12日にドナルド・トランプ大統領が署名した、カリフォルニア州に適用されていたゼロエミッション車(ZEV)の販売義務を撤回する措置(2025年6月12日記事参照)は含まれておらず、同措置を加味すれば、さらに低い予測となる可能性がある。

国際エネルギー機関(IEA)も、2025年5月14日にEV市場に関する見通しを発表した。2030年時点での米国におけるEVの販売割合を20.6%と予測、2024年の50%以上という予測から大きく下方修正した(注2、注3)。

EV普及の減速要因としては、1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品に対する輸入関税の引き上げや、トランプ政権におけるEV政策の見直しが挙げられている。これまでに明らかになったEVへの逆風とみられる政策は次のとおり。

  1. 2025年1月20日、トランプ氏は「米国のエネルギーを解き放つ」と題した大統領令を発表。これに基づき、運輸省(DOT)と環境保護庁(EPA)ではそれぞれ、企業別平均燃費(CAFE)基準と温室効果ガス(GHG)排出基準の再検討中。
  2. 6月12日、前出のカリフォルニア州のZEV販売義務撤回にトランプ氏が署名。同日に同州を含む11州がEPAを提訴(2025年6月17日記事参照)。
  3. DOTは2月12日、インフラ投資雇用法(IIJA)に基づき開始されていた、EV充電施設の設置に向けた助成金の拠出を停止。これに対して、16州がDOTを提訴し、現在係争中(2025年5月9日記事参照)。

これらに加えて、5月22日に連邦議会下院で可決された2026年度(2025年10月~2026年9月)予算法案が挙げられる。同法案にはインフレ削減法(IRA)で制定された新車・中古車・商用車購入者向けのEV税額控除の廃止、スクールバスやごみ収集車などの温室効果ガス(GHG)無排出化に対する助成金の廃止、バッテリー生産に係る先進製造業向けの税額控除の段階的廃止と制限が含まれている。同予算法案には、EV登録料として1台当たり年間250ドル(ハイブリッド車は100ドル)の支払い義務も盛り込まれた。同法案を審議中の上院では、商業科学運輸委員会の共和党議員から、CAFE基準値を順守しない企業への罰金撤廃を含む草案が発表された。罰金が撤廃された場合の燃費規制の効力に対しては懸念の声も上がっている。

(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を指す。

(注2)既に実施・公表済みの政策を前提としたSTEPSシナリオ(Stated Policies Scenario)による推計。

(注3)IEAは2030年のEV販売台数を950万台と予測し、仮に2030年の全車販売台数を過去最高の1,756万台(2016年時点)に達すると仮定した場合でも、EVの販売割合は50%を超えることが予測されていた。

(大原典子)

(米国)

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