全米16州と首都ワシントン、EV充電用資金の凍結巡り、米運輸省を提訴
(米国)
ニューヨーク発
2025年05月09日
全米16州とコロンビア特別区(首都ワシントン)の司法長官ら(注1)は5月7日、米国運輸省が2月6日に発表した連邦政府による電気自動車(EV)用充電インフラ資金の凍結は違法で違憲だとして、運輸省とショーン・ダフィー長官を連邦地裁に提訴した。
訴状によると、運輸省連邦道路局(FHWA)は2月6日、「EV義務化の撤廃」を含む大統領令(14154号、1月20日発令)に基づき、各州のEV充電インフラ計画の承認を撤回し、2021年11月に成立したインフラ投資・雇用法(IIJA)の下で割り当てた「国家EVインフラプログラム(NEVIフォーミュラプログラム)」からの資金配分を停止した(2025年2月12日記事参照)。原告は、これが連邦議会の立法権を侵害する行為で、行政手続法(注2)と合衆国憲法に反するとして、資金凍結の差し止めを求めている。
NEVIフォーミュラプログラムは、FHWAが承認した州の充電インフラ計画に対し、総額50億ドルの連邦資金を配分する制度で、2022年以降、全州で合計150件以上が承認されてきた(2022年9月29日記事参照)。例えば、ニューヨーク州には1億7,500万ドル以上が配分され、11カ所の充電施設を整備済みで、現在12件のプロジェクトが進行中だ。原告は、EVインフラ整備を通して公害や健康被害、気候変動への対策を進めていると主張。資金の凍結はこれら活動に深刻な支障を与えていると訴えている。ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は「政権の違法行為はEVインフラを進めるニューヨークの前進を阻み、地球温暖化への対応を妨げるものだ。超党派で成立した法律を大統領が踏みにじることは極めて遺憾だ」と述べた。
(注1)アリゾナ州、カリフォルニア州、コロラド州、デラウェア州、ハワイ州、イリノイ州、メリーランド州、ミネソタ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ニューメキシコ州、オレゴン州、ロードアイランド州、ワシントン州、ウィスコンシン州、バーモント州、コロンビア特別区
(注2)連邦政府の行政機関が規制を策定し、発行するプロセスを規定する法律。
(大原典子)
(米国)
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