VAT引き上げ撤回、2025/2026年度の予算案見直しへ

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2025年05月08日

南アフリカ共和国の西ケープ州の高等裁判所は4月27日、付加価値税(VAT)税率の0.5ポイント引き上げの決定を停止する命令を出した。4月2日に2025/2026年度(2025年4月~2026年3月)の本予算案は可決していたが、第2党の民主同盟(DA)などが予算承認の手続き違反を理由に、裁判所に提訴していた(2025年4月8日記事参照)。イノック・ゴドングワナ財務相はこの停止命令に同意し、5月1日以降もVAT税率は15%が維持される。

財務省の声明によれば、予算案可決後もゴドングワナ財務相を中心に、政党やその他関係者との協議を続けており、裁判の判決前に、VAT引き上げの撤回を決定していた。控訴の予定はない。

DAは声明を発表し、裁判所の決定は「すべての南ア人にとっての勝利」であり、「政府の決定は適切な監視なしに実行されることはないことを証明した」と述べた。

ゴドングワナ財務相は4月30日、2025年予算案を再精査し、5月21日に再提出することを発表した。VAT引き上げ撤回により、中期的に約750億ランド(約5,850億円、1ランド=約7.8円)の歳入不足となることが予想されており、政府支出の削減が求められる。ゴドングワナ財務相は、財政責任へのコミットメントを維持し、持続可能な財政確保のための代替措置を追求すると述べた。

南アを代表するビジネス団体のビジネスリーダーシップ・サウス・アフリカ(BLSA)は、4月28日のニュースレターで、南ア財政の債務比率の高さに懸念を示し、「財政の軌道が悪化しないようにすることも重要」と指摘する。

IMFの発表によれば、南アは経済の低成長、国営企業の赤字、債務返済コストの上昇などを理由に、過去10年、公的債務の増加を抑制することができていない。債務増加率は新興国の中でも深刻で、2008年の公的債務はGDP比23.6%だったが、2023年末には74.1%まで増えた。IMFは、2030年までに債務はGDP比86%近くに達し、財政収入の4分の1が債務返済に充てられると予測する。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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