ポルトガル総選挙、右派政党がさらなる飛躍
(ポルトガル)
マドリード発
2025年05月26日
ポルトガルの総選挙(一院制230議席)が5月18日に行われた。今回の総選挙は、3月11日に右派選挙連合・民主同盟(AD)を率いる与党の中道右派・社会民主党(PSD)党首だったルイス・モンテネグロ首相が利益相反疑惑を受けて、自身の信任動議を議会に提出したが、否決されたことによる(2025年3月19日記事参照)。
内務省事務総局選挙管理局の発表によると選挙結果は、民主同盟が9議席増やして89議席を獲得して勝利し、政権基盤を強化したが、過半数(116議席)には届かなかった(添付資料表参照)。野党第1党だった中道左派・社会党(PS)は20議席減らして58議席となり、ペドロ・ヌーノ・サントス党首は敗北の責任を取って党首を辞任すると発表した。野党第2党だった極右のシェーガ党(CH)は社会党と熾烈(しれつ)な2位争いを繰り広げ、8議席増やして、社会党と同じ58議席を獲得した。5月28日に確定する海外在住選挙区4議席のうち、2024年の選挙ではシェーガ党が2議席を獲得していることから、野党第1党に躍り出る可能性もある。
また、1議席を獲得した人々と共に党(JPP)は、マデイラ自治州を拠点とする政党だが、1地域政党が共和国議会に進出した初めてのケースとなり、歴史的な結果だ。
ポルトガルで右派がこれほど議席を増やしたことはこれまでになかった。憲法改正を行うのに必要な3分の2の議席を右派が獲得し、自由選挙が始まった50年の歴史の中で初めてのことだ。一部の右派の長年の夢である憲法前文に残る「社会主義」という文言削除は、将来の改正で実現される可能性も出てきた。
現時点では、モンテネグロ首相は社会党ともシェーガ党とも連立を組む意思はなく、状況に応じて双方と交渉、野党の責任を問う構えでいる。社会党の一部指導部は与党・社会民主党とシェーガ党が憲法改正に動くことを阻止するために、社会党と民主同盟が4年間の協定を結ぶ可能性があることを認めた。民主同盟は社会党がより中道的になり、同時にシェーガ党には、有権者が政治的安定を求めているという認識をより深く理解し、次期執行部が議会の任期満了まで政権を担えるよう協力することを期待している。
左派連合(BE)の指導部は、「前例のない右傾化」でBEが議席を5議席から1議席にまで減らした「選挙の崩壊」の主因と述べ、憲法改正を回避するために「新たな結束」を求めている。しかし、右派勢力の拡大は欧州政治の構造的な変化でもあり、ポルトガルでも左派は伝統的な選挙基盤を失いつつある。
5月20、21日の両日、マルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領は各党党首と会談を行った。20日には民主連合を率いるモンテネグロ首相、社会党のサントス党首、シェーガ党のアンドレ・ベントゥラ党首と会談した。詳細は明らかではないが、「ネゴシオス」(5月21日)によると、主要3党とも安定を求めることでは共通している。特筆すべきは、右派のリベラル・イニシアチブ党(IL)のルイ・ロチャ党首が憲法改正の提案を発表したことだ。IL党首は、憲法が、イデオロギー的偏りが少なく、より自由でより自律的な社会を反映し、国家が経済に果たす役割を減らすことを目指すとしている。
(小野恵美)
(ポルトガル)
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