チリ次期大統領選世論調査、マテイ氏とカスト氏が同率トップ

(チリ)

調査部米州課

2025年05月20日

民間調査会社のカデムは5月18日、最新の世論調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。それによると、チリの次期大統領選挙(投票日:2025年11月16日)に関する質問で、これまで支持率単独トップだったエブリン・マテイ氏に、ホセ・アントニオ・カスト氏が並び、同率トップとなった(添付資料表参照)。

マテイ氏は、政治思想としては中道右派に属する野党連合チレ・バモス(Chile Vamos)から立候補する。2024年12月まで首都圏州内のプロビデンシア区長を務めた人物で、過去の閣僚経験や大統領選への立候補経験などを評価する声が大きい。

一方のカスト氏は、前回の大統領選の決選投票でガブリエル・ボリッチ現大統領に競り負けた人物として記憶に新しく(2025年5月16日付地域・分析レポート参照)、右派に属する共和党(PRCH)から立候補する。現政権に対する歯に衣(きぬ)着せぬ批判姿勢によって、過去にはカデムの世論調査でもトップの支持率を獲得していたが、2023年中旬ごろからはマテイ氏優勢となっていた。

この度の両者の支持率の均衡に加え、回答者の3割がまだ、どの候補者へも支持を表明していない点を踏まえると、混戦を極める現状をうかがわせる。チリでは2023年から選挙と国民投票への義務投票制(注1)が再導入されている(2023年1月16日記事参照)。従って、前回2021年の大統領選と比べても、浮動票の行き着く先が選挙結果に及ぼす影響が高まっているという側面もある。

与党陣営は予備選通じ、候補者絞り込み

次期大統領選に大きな進展がみられるのは、2025年6月29日に行われる予備選挙(注2)となるだろう。与党陣営に目を移すと、2025年3月まで現政権の屋台骨として内相を務めたカロリナ・トア氏は、今回のカデムの世論調査では10%の支持率で、マテイ氏とカスト氏に後れを取っている。しかし、トア氏は5位のゴンサロ・ウィンター氏と6位のジャネット・ハラ氏と同じ派閥として予備選に参加予定で、この3者への支持率合計は21%となることから、マテイ氏やカスト氏へも対抗し得る勢力として評価できる。野党陣営では、カスト氏はそもそも予備選には参加しない意向を示しており、予備選を通じたマテイ氏陣営との合流は実現しない見通しだ。

(注1)有権者が合理的な理由なく投票を行わない場合、罰金が科される。予備選挙は対象外。

(注2)会派ごとの候補者を1人に絞り込む目的で、任意に実施される。

(佐藤竣平)

(チリ)

ビジネス短信 f42c0dcec439a10d