メキシコ、アルゼンチンとの自動車協定の第8次追加議定書を公布、無関税枠と原産地規則を1年間延長
(メキシコ、アルゼンチン、ブラジル)
調査部米州課
2025年05月12日
メキシコ経済省は5月9日、2025年3月18日に締結されたラテンアメリカ統合連合(ALADI)経済補完協定(ACE)55号付属書I(通称「メキシコ-アルゼンチン自動車協定」)の第8次追加議定書を連邦官報で公布した。メキシコとアルゼンチンの間では2003年1月に発効したACE55号に基づき、完成車と自動車部品の貿易が自由化されているが、2000年代後半にメキシコからの輸出が急増したこともあり、2012年以降は完成車について無関税輸入割当金額が設定され、その範囲内で関税が撤廃されている(2012年12月18日記事参照)。これまでは3年に一度の頻度で追加議定書を締結し、当該期間の年間割当金額を定めていた。今回は3年ではなく、2025年3月19日~2026年3月18日の1年間のみを規定している。金額は従来の7億7,312万5,578ドルが維持された。メキシコ中央銀行によると、2024年4月~2025年3月の12カ月間のメキシコからアルゼンチンへの完成車輸出額は1億8,630万ドルであることから、現行貿易額(注1)を考慮すると十分な金額だ。
特恵関税享受の条件となる原産地規則は、2015年以降に厳格化された(2015年4月8日記事参照)が、完成車や自動車部品の域内原産割合(RVC)の閾値は、従来の35%が2026年3月18日まで維持される。2026年3月19日以降に適用されるRVCの閾値(いきち)と計算方式については、今後、両国間で交渉して決定される(議定書第4条)。カーオーディオやトランスミッションなどの特定自動車部品に適用されていたRVCの軽減措置も継続された(同第7条)。完成車の新モデルについての販売開始から2年間の時限的RVC軽減措置(20%)も変更されていない(同第6条)。また、従来どおり、完成車に組み込まれる自動車部品の原産性を判断する基準としては、(1)4桁レベルの関税分類変更基準(CTC)、もしくは、(2)FOB取引価額に占める非原産材料の価額が50%以下、が適用される(同第5条)。原産地規則の詳細は、添付資料の表を参照。
追加議定書は3月19日に発効したが、3月18日までに第7次追加議定書の下で原産地証明書の発給を受けた完成車および自動車部品については、3月19日から60日(暦日)間は原産地証明書の発給をあらためて申請することなくACE55号の特恵関税が享受できる(議定書第9条)。
求められる南米2大国との貿易協定の深化
経済省は同日付官報で、アルゼンチンと別途締結しているACE6号の第17次追加議定書を公布し、アルゼンチンに対するインゲン豆の輸入関税を撤廃することを明らかにした(注2)。メキシコは南米諸国の多くと自由貿易協定(FTA)を締結しているが、ブラジルやアルゼンチンとの間にFTAはなく、ALADIの枠組みで締結したACE(注3)のみが存在する。ブラジルとは、ACE55号付属書II(メキシコ-ブラジル自動車協定)に加え、ACE53号があるが、対象品目がメキシコ側HS8桁レベルで924品目と限られており、今後の2国間交渉を通じた対象拡大が期待される。米国の第2次トランプ政権の関税政策の影響を軽減するためには、輸出の8割以上を占める米国以外の輸出市場の開拓が求められている。
(注1)同期間のアルゼンチンからのメキシコへの完成車輸入額はゼロ。
(注2)実際の撤廃日は、メキシコが第17次追加議定書を官報で公布したことをALADI事務局に通知してから30日以内となる。
(注3)正確には、「部分的到達・経済補完協定(AAP.CE)」という名称。
(中畑貴雄)
(メキシコ、アルゼンチン、ブラジル)
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