連邦と地方自治体公務職員の賃金協定が成立、5.8%の賃上げで合意
(ドイツ)
ベルリン発
2025年05月16日
ドイツの1,000の職種において約200万人の労働者を代表する統一サービス産業労働組合(ver.di)とドイツ官吏同盟・協約連合(dbb)は、連邦内務省と地方自治体使用者団体連合会(VKA)に対して2024年10月から、連邦と地方自治体の公務職員の待遇改善を求め賃金交渉を行っていたが、2025年4月6日に仲裁委員会の提案を受けて条件面で合意した。ver.diはその後、4月10日から5月9日まで組合加盟者による投票を行い合意内容の可否を確認し、過半数の賛成票を得た。これを受けて、ver.diの連邦公共サービス賃金委員会は5月12日に合意内容受諾を表明し、新たな賃金協定が正式に発効した。
組合側は、主に人手不足と労働者の負担増の2点を問題視。問題解決のためには待遇改善と賃上げによって離職防止と就業者数増加をはかることが必要であると訴え、月給の8%または月額350ユーロ以上の賃上げや、有給休暇の3日増などを求めていた。他方、雇用者側は、財政的な理由から賃上げに難色を示したため、交渉が長引いた。そのため3月10日にはドイツの主要な13空港でストライキが行われるなど、ドイツ各地でさまざまなストライキやデモが頻発。最終的には仲裁委員会が合意形成に向けてのイニシアチブをとった。
待遇改善の対象は、連邦内務省によると13万人余りの連邦職員と260万人余りの地方自治体公務職員。ここには、ローカル交通機関、保育園、空港、ごみ収集の職員など、幅広い職種が含まれる(注1)。今回合意に至った主な内容は、2段階に分けて合計5.8%の賃上げ、期末手当の増額、シフト手当の倍増などで、2025年1月1日から遡及(そきゅう)して適用され(注2)、2027年3月31日まで27カ月間有効となる。地方自治体は2027年以降、毎年100億ユーロ以上の追加支出が見込まれ、雇用者側の財政負担は大きいとされている(「コミューナル」誌2025年4月15日)。
連邦政府を代表して交渉にあたった当時のナンシー・フェーザー内務・地域相はこの合意について、公共サービスの将来に向けてよいニュースであり、職員の待遇改善や負担軽減につながり、また解雇保護や雇用期間の制限などの一部の不公平な条件も是正されたとして歓迎した(プレスリリース、ドイツ語)。なお、州職員の賃金交渉は2025年秋から始まる。
(注1)ver.diと、連邦航空保安企業協会(BDLS)やベルリン市交通局(BVG)との賃金協定は別途、締結された。
(注2)前回の労働協約の有効期間は、2024年12月までだった(2023年4月27日記事参照)。
(打越花子)
(ドイツ)
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