連邦と地方自治体の公務職員の賃上げ妥結、一時金に加え平均11.5%増

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年04月27日

ドイツでは、2023年1月に連邦と地方自治体の公務職員の賃金交渉が始まり、4月22日の第4回交渉で妥結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。使用者側は連邦内務省と地方自治体使用者団体連合会(VKA)、労働組合側は統一サービス産業労働組合(ver.di)とドイツ官吏同盟・協約連合(dbb)が交渉した。

合意した具体的な内容は、まず物価上昇を踏まえた一時金(注2)として、6月に1,240ユーロ、7月から2024年2月までは毎月220ユーロを支払う(合計3,000ユーロ)。賃金自体は、2024年3月から月給を一律で200ユーロ引き上げ、さらにその時点の月給に前述の200ユーロを足した額に5.5%を乗じた金額の賃上げを行う。この方法で、月額で最低340ユーロの賃上げが保証され。平均で420ユーロの引上げとなる。統一サービス産業労働組合(ver.di)によると、賃上げ率は平均すると11.5%になるという。今回の労働協約の有効期間は2023年1月から2024年12月までの24カ月間。

ドイツの公務職員とは、官吏(Beamte)、裁判官、軍従事者などを除き、連邦や州、地方自治体で勤務する者を指す。今回の労働協約の適用対象には、病院・介護施設、空港、ごみ収集、高速道路など、幅広い公共サービス分野で勤務する者も含まれており、交渉期間中には同分野でのストライキが頻発した。

労働協約が適用対象になる人数は連邦で約13万4,000人、地方自治体では約240万人だ。連邦内務省によると、今回の合意内容による連邦の公務職員分の2024年12月までの負担増は約14億3,000万ユーロとなる。また、今回の合意が官吏の賃金額に間接的に反映されて賃金が引き上げられた場合、連邦の負担増は約49億5,000万ユーロに上る。地方自治体使用者団体連合会によると、今回の合意内容による地方自治体の公務職員分の2024年12月までの負担増は約170億ユーロとなる。

ドイツではエネルギー価格えの高騰などを受けて、物価上昇率が高止まりしており、連邦統計局は3月の消費者物価上昇率を前年同月比7.4%(速報値)と発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。在ドイツ日系企業としても、従業員の賃金水準をどの程度にするか、頭を悩ませているとの声が聞かれる。ジェトロが2022年9月に実施した「2022年度海外進出日系企業実態調査(欧州編)PDFファイル(2.2MB)」では、2023年度のベースアップ率見込み(名目、平均)について、在ドイツ日系企業の回答平均(回答企業数226社)は4.19%となっている。

(注1)ドイツの公務部門の労働協約には、(1)連邦と州の下の市町村など地方自治体の公務職員が対象になるもの(TVöD)、(2)全16州のうちヘッセン州を除く州の公務職員が対象になるもの(TV-L)、(3)ヘッセン州の公務職員が対象になるもの(TV-H)がある。今回交渉が妥結したのは、2022年12月末で有効期限切れになっていた(1)の労働協約。

(注2)ドイツではインフレ対策として、2022年10月末~2024年末、3,000ユーロまでの一時金は税と社会保険料が免除となる時限措置が実施されている。

(高塚一、二片すず)

(ドイツ)

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