トランプ米政権、アマゾンによる関税費用表示の報道を「敵対的」と非難

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月02日

米国のトランプ政権の関税政策を巡り、米国アマゾンが同社のウェブサイト上で、各商品の総額の横に、関税が占めるコスト割合を表示する計画を進めていると、政治ニュースレターのパンチボウル・ニュースが報じた(4月29日)。これに対し、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は同日の記者会見で、アマゾンの動きを「敵対的かつ政治的な行為だ」と批判した。アマゾンはこの疑惑に反論し、関税費用を表示する予定はないと説明した。

アマゾンは同日の発表文で、同社が2024年に立ち上げた低価格商品に特化した特設サイト「アマゾン・ホール」を運営するチームが、特定の商品に輸入手数料を記載する案を検討したことはあると説明した。ただし、この案は「承認されたこともなく、今後も実現する予定はない」とした。同社の広報担当者によると、この措置は「アマゾンの主要ウェブサイトで検討されたことは一度もなく、関連サイトでも実施されていない」と述べた(CNN4月29日)。

ドナルド・トランプ大統領はこの案を巡り、アマゾン設立者のジェフ・ベゾス氏に自ら電話をかけ、ホワイトハウスの反発に拍車をかけた報道への不快感を示した。その後、トランプ氏は記者団に対し、ベゾス氏は電話中「とても親切で、素晴らしかった」「非常に素早く問題を解決した」と同氏を称賛した。

アマゾンをはじめとする米国の小売業者は、トランプ氏の関税政策によって大きな打撃を受ける懸念がある。4月初めに、アマゾンは第三者の販売業者ネットワークに働きかけ、関税が物流、商品調達、そして事業運営にどのような影響を与えているか調査を始めた。輸入コストの上昇に直面する一部の販売業者は、既に価格を引き上げ、広告費を削減している。同社のアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)も4月初め、販売業者は関税による「コストを消費者に転嫁する必要があるだろう」と述べている(CNBC4月29日)。

トランプ氏は、中国からの多くの輸入品に「相互関税」を含む追加関税を課すとともに、5月2日から中国からの輸入に対して「デミニミス・ルール」(注)の適用を停止する大統領令を発表した(2025年4月4日記事参照)。これにより、低価格を売りに米国で急速に拡大したSHEIN(シーイン)や、Temu(テム)などの中国系EC(電子商取引)事業者などは、関税高騰を理由に相次いで値上げを発表している(CNN4月25日)。

トランプ政権発足から100日目(2025年5月1日記事参照)を迎えたが、各種世論調査では、トランプ氏の支持率は低下傾向にあり、米国民はトランプ氏の経済全般への対応に不満を感じている(2025年4月28日記事参照)。特に関税発動により物価上昇と景気後退への警戒感が高まり、足元では、民間調査会社コンファレンスボードが4月29日に発表した4月の消費者信頼感指数が86.0と、2020年5月以来の低水準に落ち込むなど、消費者心理も冷え込みつつある(添付資料図参照)。

(注)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに無税で輸入可能となっていたが、トランプ氏は中国に対して、このデミニミス・ルールの適用停止を発表した。

(樫葉さくら)

(米国)

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