米主要港、3月の小売業者向け輸入コンテナ量は駆け込み需要で増加続くも、今後は大幅減に転じる見込み

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月13日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(5月9日)によると、2025年3月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、4月時点の予想を上回り、前月比5.5%増、前年同月比11.3%増の215万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。

米国の主要港では、ドナルド・トランプ米大統領の追加関税政策を受け、貨物の輸入量は駆け込み需要により高水準で推移し続けてきた。今回発表された3月のデータもその一環と考えられる。しかし、NRFのサプライチェーン・税関担当副会長のジョナサン・ゴールド氏は「関税がサプライチェーンに及ぼす真の影響が見え始めている」とし、関税引き上げに伴う企業のコスト増と貨物量の減少がもたらされる見込みと述べた。

NRFの見通しでは、4月までは前年同月比で増加するものの、その後は19カ月ぶりにマイナスに転じると見込む。5月は12.9%減の181万TEU、6月は20.2%減の171万TEU、7月は23.4%減の177万TEU、8月は21.5%減の182万TEU、9月は21.2%減の179万TEUと、例年よりも大幅に減少すると予想している。もっとも、在庫積み増しの反動減は避けられないものの、米中双方が追加関税率を大幅に引き下げることに合意した(2025年5月13日記事参照)ことで、今後の見通しは若干改善する可能性もありそうだ。

しかし、一連の関税措置に伴う小売事業者への影響が一定程度出ることは避けられないとの見方も多い。ゴールド氏は、2月以降に発動された一連の関税措置(注3)は、小売業者にとって「購買プロセスで最も重要な時期に課された」と述べている。例年、4月から6月ごろにかけては、特に秋の新学期商戦に向けて発注を増やし始める時期に当たるが、2025年はこの時期に関税引き上げが発動したことによって、多くの小売業者が注文を一時停止、またはキャンセルしているもようだ。実際に、中国から米国に向かう貨物船は減少傾向にあり、ポート・オプティマイザーの船舶追跡データによると、5月10日までの1週間に中国からロサンゼルス港に到着予定の貨物船数は前年比33%減少する見込みだ。米中ビジネス協議会のショーン・ステイン会長は、「新型コロナ禍でトイレットペーパーが品薄になったように、数週間以内に物資が不足し始めるだろう」「米政権が品薄や買いだめが起こるまで問題解決を先延ばしにした場合には、既に手遅れだ」と警告している(NBCニュース4月25日)。5月12日の米中合意により、大幅に追加関税率が引き下げられたとはいえ、なお高い水準であり、小売事業者や消費者の行動にどの程度の影響を及ぼすのかはなお不透明な状況だ。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。

(注3)米国の全ての貿易相手国に対し10%の追加関税を課すベースライン関税、米国の貿易赤字額が大きい国・地域に対する「相互関税」、中国に対する145%の追加関税を含む(2025年4月11日記事参照)。

(加藤翔一、樫葉さくら)

(米国)

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