バングラデシュからインドへの輸入経路に大幅な制限、衣料品などに影響

(インド、バングラデシュ)

ニューデリー発

2025年05月21日

インド商工省外国貿易部(DGFT)は5月17日、バングラデシュからの一部品目の輸入経路を制限すると発表し、即時発効させた(添付資料参照)。内容は次のとおり。

  • バングラデシュからの衣料品輸入は、西部のナバシェバ港(ムンバイ)および東部のコルカタ港からのみ許可され、陸上国境通関施設(ランドポート)の経由は一切認められない。
  • 果物、果物風味の飲料、炭酸飲料、加工食品、綿花・綿糸くず、プラスチック・ポリ塩化ビニル完成品(顔料・染料・可塑剤・顆粒を除く)、木製の家具は、北東部のアッサム州、メガラヤ州、トリプラ州、ミゾラム州のすべての陸上税関施設(LCS)や統合チェックポスト(ICP)、また東部の西ベンガル州内で北東インド地域に隣接するチャングラバンダ、フルバリのLCSの利用が認められない。
  • 上記の対象品目に、魚、液化石油ガス(LPG)、食用油、砕石は含まれない。
  • 上記の制限は、インドを経由したネパールおよびブータンへの輸出には適用されない。

この制限により、バングラデシュの北東側に位置し海に面していない北東インド地域では、対象品目をバングラデシュから陸路で直接輸入することができなくなった。また、衣料品に関しては、陸路での輸入が停止されることで、バングラデシュからインドへ輸出する際の輸送コストおよび輸送時間が大幅に増加することが見込まれる。

2024年8月にバングラデシュの親インド派政権が崩壊して以降、インドとバングラデシュの関係は不安定になっており、2025年3月のバングラデシュ暫定政権のムハンマド・ユヌス首席顧問の北東インド地域に対する発言(注)をきっかけとして、貿易面での措置の応酬が生じている。まず、インド財務省間接税関税中央委員会(CBIC)が4月8日、バングラデシュからインドを経由してのネパールとブータンを除く、第三国への貨物輸出を認める規則を停止した(2025年4月16日記事参照)。これに対抗するかたちで、バングラデシュ国家歳入局(NBR)は4月13日、インドからの陸路での糸の輸入禁止を通達した(「タイムズ・オブ・インディア」紙4月16日など)。

インドの独立系シンクタンクである世界貿易研究イニシアチブ(GTRI)のレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回のインドの措置は、バングラデシュからインドへの輸出額全体の42%(年間7億7,000万ドル相当)に関わり、特に輸入金額の大部分を占める衣料品への影響が大きい。同レポートでは、本措置の意図として、バングラデシュが中国との接近を図っていることへの反発、バングラデシュの衣料品の価格優位性に対しインドのアパレル企業が抱える不満への対応、バングラデシュが講じている貿易措置への対抗があると推測している。

(注)ユヌス首席顧問は、2025年3月末の訪中時に「インドの北東7州は内陸地域で、海へのアクセスがない。われわれはこの地域の唯一の海の守護者で、これは大きなチャンスでもある。中国経済圏は(この地域への)拡大の可能性がある」と発言したとされ、北東インド地域に対する侮辱だとしてインド側は強く反発していた(2025年4月16日記事参照)。

(丸山春花)

(インド、バングラデシュ)

ビジネス短信 c1cd53d52c986e0f