パラグアイ・ビジネスセミナーを開催、ペニャ大統領は豊富な再エネをアピール
(パラグアイ、日本)
調査部米州課
2025年05月22日
ジェトロは5月21日、在日パラグアイ大使館と共催で、パラグアイ・ビジネスセミナーを開催した。セミナーには、パラグアイのサンティアゴ・ペニャ・パラシオス大統領、ハビエル・ヒメネス商工相、ルベン・ラミレス・レスカノ外相、クラウディア・セントゥリオン公共事業通信相らが出席した。
基調講演を行ったペニャ大統領は、パラグアイの魅力として、豊富な再生可能エネルギー、豊富な若年層、食糧生産能力の高さを挙げた。また、パラグアイは、アルゼンチンやブラジルといった大国に隣接した内陸国であるものの、水路(河川)を介する物流によって南米諸国に強固な物流ネットワークを有する、と強調した。パラグアイの平均年齢は26歳と南米で最も若い。主要輸出産品は大豆、牛肉、コメなどで、ペニャ大統領は、「パラグアイの人口は約600万人だがその10倍の食糧生産能力があり、世界の食糧供給国の1つである」と述べた(注1)。
続いて講演したヒメネス商工相は、パラグアイは「機会にあふれる国」と述べ、再エネ率の高さ、税制優遇制度であるマキラ制度の存在、チリなど太平洋側諸国との近接性を強調した(注2、注3)。また、パラグアイとブラジルの国境に位置するイタイプダムから得られる水力発電によって、国内の発電のほぼ全てを賄っている(注4)。再エネ率の高さは世界でも有数で、余剰電力はブラジルへ輸出している。ヒメネス商工相は、将来的なパラグアイにおけるグリーン水素生産の可能性についても言及した。
本社が岡山県に所在する萩原工業は、2023年にパラグアイでバルチップ生産工場を設立し、同国を中南米諸国への輸出拠点と位置付ける。バルチップは、コンクリートに耐久性を与える特殊な繊維。同社のバルチップは欧米、中南米、ASEAN、アフリカ諸国といった世界中のインフラプロジェクトに使用されている。中南米での現地生産を検討していた際、パラグアイが有する再エネ率の高さ、良好な治安、パラグアイに居住する日本語が堪能な日系人の豊富さなどにメリットを感じ、同国への投資を決めた。今後は、再エネ由来の電力での生産を求める欧州のサプライヤー向けに、パラグアイからの輸出を検討している(注5)。
パラグアイの2024年のGDP成長率は4.2%、1人当たりGDP(2023年)は6,276ドル。
パラグアイの魅力を講演するパラグアイのペニャ大統領(ジェトロ撮影)
(注1)世界銀行のデータによると、2023年のパラグアイの人口は684万人。
(注2)マキラ制度は、パラグアイへの投資誘致を目指した税制優遇制度の1つ。ブラジルなどへの製造品輸出を想定しパラグアイで加工を行う際、原材料や資本財の輸入関税が免除されるなどの税制恩典がある。詳細は、2014年1月16日記事参照。
(注3)ヒメネス商工相は講演の中で、パラグアイの首都アスンシオンからチリの首都サンティアゴ、アルゼンチンの首都ブエノスアイレス、ウルグアイの首都モンテビデオ、ブラジル最大の経済都市サンパウロまでは、いずれも飛行機で片道2時間ほどの距離と述べた。
(注4)イタイプ水力発電所は2024年、1984年のダムの運転開始以降、30億メガワット時(MWh)を発電した世界初の水力発電所としてギネスブックに掲載された。
(注5)パラグアイのビジネスチャンスについては、「世界は今-JETRO Global Eye~パラグアイがアツい!“南米のへそ”で日本人が奮闘中」も参照。
(辻本希世)
(パラグアイ、日本)
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