欧州委員会、TikTokに対しデジタルサービス法違反を暫定的に通知
(EU、中国)
調査部欧州課
2025年05月21日
欧州委員会は5月15日、中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」に対し、同社がデジタルサービス法(DSA、2022年10月6日記事参照)に定められた広告レポジトリの公開義務を果たしていないとの暫定的見解を通知した(プレスリリース)。DSAでは、広告の内容、広告の対象となるユーザー、広告主など必要な情報の提供を求めており、このような広告レポジトリは、研究者や市民社会にとって、選挙関連を含む詐欺広告や組織的な情報操作を検出するために不可欠だ。
欧州委は、TikTokの広告レポジトリはこれらの情報に基づいて包括的に検索することができず、ツールの有用性が制限されている、と指摘する。
欧州委の暫定的調査結果は、社内文書の分析、TikTokのツールのテスト、専門家へのインタビューなどを含む徹底的な調査に基づく。TikTokには、調査ファイルの確認や反論文書の提出など、防御権が認められている。これと並行して、欧州デジタルサービス委員会(注)にも諮問が行われる予定。
今回の暫定的見解が最終的に確認された場合、欧州委はコンプライアンス違反の決定を下し、同決定により、TikTokの全世界の年間総売上高の6%を上限とする罰金や定期的な制裁金を科したり、是正措置が順守されていることを確認するための監督強化期間を導入したりする可能性がある。
欧州委は3月19日、デジタルプラットフォームに関するもう1つのEU法であるデジタル市場法(DMA)に基づき、米国アップルが順守すべき相互運用性の義務に関する具体的な措置を示す2つの決定を採択した。また、米国グーグルの親会社アルファベットに対し、2つのサービスに関して、DMAを順守していないとして、予備的調査結果を送付している。
デジタルプラットフォームに関するEUの2つの法規制であるDSAとDMAの主な目的と対象は次のとおり。
- DSA:オンラインプラットフォームにおける違法コンテンツの削除、有害なコンテンツ・偽情報などへの対策、透明性の確保、ユーザー保護を図ることを目的とし、その対象はインターネット・サービス・プロバイダーやクラウドサービス、メッセージングなど、第三者のコンテンツを伝達・保存するデジタルサービスを提供する、オンラインの「仲介事業者」(例:SNS、EC、動画共有、アプリストアなど)。特に「VLOPs/VLOSEs(非常に大規模なオンラインプラットフォーム/検索エンジン)」に厳格な義務。
- DMA:オンライン仲介サービスや検索エンジン、SNS、動画共有、オペレーティングシステム(OS)など「中核プラットフォーム」の中でも、アルファベット、アップル、メタ、マイクロソフト、アマゾンなど「ゲートキーパー」に指定された企業が及ぼす悪影響に対処し、公平な競争条件を確保すること。
(注)DSAによって設立した、欧州委の独立した諮問グループ。
(坂本裕司)
(EU、中国)
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