欧州委、欧州への若手研究者誘致策となる新たな助成プログラムを発表

(欧州、米国)

ブリュッセル発

2025年05月21日

欧州委員会は5月15日、技能同盟政策(2025年3月14日記事参照)の一環として、若手研究者を欧州に引きつけるための新たなプログラム「Choose Europe for Science」の立ち上げを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同プログラムは、主に博士号の取得後に短期契約で研究を続ける博士研究者(ポスドク)に最長5年間の研究職ポジションの提供を支援するものだ。研究者にとって、欧州を世界で最も魅力的な移住先にすることで、基礎研究から先端技術開発まで、あらゆる研究分野における主導権を取り戻す狙いがある。

同プログラムに応募できるのは、EU域内およびEUの研究開発プログラム「ホライズン・ヨーロッパ」参加国(注)の大学や政府研究機関のほか、研究開発型スピンオフなどだ。研究機関は、4~5年間の研究職向けプログラムを策定し、3人以上の研究者を募集する必要がある。研究対象の具体的な指定はなく、研究者の国籍も問わない。選定された場合、研究職向けプログラムのうち前半の最長3年間、研究者への最低報酬として1人当たり月額6,700ユーロ相当(税引前)の助成を受けることができる。ただし、後半の2年間については、研究機関が研究者に同一地域の他の研究機関と遜色ない水準の報酬を提供することが求められる。また、研究機関は研究者に対し、研究職向けプログラムの期間以降も引き続き長期的なキャリアを提供することが期待される。なお、今回の募集は試行プログラムとの位置づけで、2025年度の支援額は2,250万ユーロにとどまる。

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は5月5日、今回の発表に先立ち、パリのソルボンヌ大学で演説した。名指しこそしなかったものの、補助金削減などで大学に圧力をかける米国のドナルド・トランプ大統領を念頭に、自由で開かれた研究への投資に疑問符をつける姿勢は「大きな判断ミス」だと批判。欧州は今後も自由で開かれた研究環境を強く支援するとし、米国からの頭脳流出の受け皿を目指すべく2027年までに5億ユーロを拠出する方針を明らかにした。

(注)EU加盟国のほか、ノルウェー、スイス、西バルカン諸国や東欧のEU加盟候補国など。

(吉沼啓介)

(欧州、米国)

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