欧州委、米関税への新たな対抗措置に向けた対象品目案を公表

(EU、米国)

ブリュッセル発

2025年05月13日

欧州委員会は5月8日、米国関税への新たな対抗措置に向けた対象品目の一覧案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。一覧案は、欧州委が米国との協議により関税撤廃などの十分な成果を得られない場合に、実施を検討している追加関税の対象品目をまとめたもの。6月10日まで一覧案に関するパブリックコンサルテーション(公開諮問)を実施する。

今回の対抗措置は、米国の自動車・同部品を対象とした追加関税(2025年3月27日記事参照)および一律10%のベースライン関税(2025年4月3日記事参照)に対するものだ。協議のために適用が一時停止されている鉄鋼・アルミニウム製品を対象とした追加関税への対抗措置(2025年4月16日記事参照)とは別の措置だ。

一覧案には、工業製品と農産品を中心に幅広い品目が選定されている。政治専門紙「ポリティコ」(5月8日)によると、一覧案の対象品目のうち、2024年ベースで特にEUへの輸入額が大きい品目は、航空機(131億ユーロ)、乗用車(73億ユーロ)、医療機器(64億ユーロ)、コンピュータ・同部品(53億ユーロ)など。また、一時停止中の対抗措置では除外されたバーボン(ウイスキー)も含まれている。詳細は、欧州委ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照のこと。欧州委は、パブリックコンサルテーションの後に一覧案を最終決定するとしており、対象品目は今後変更される可能性がある。

今回の対抗措置は950億ユーロ規模で、3,790億ユーロ規模にのぼるEUに対する新たな米国関税(一時停止中の関税を含む)と比べると大幅に小さい。背景には、発動済みの関税による負の影響が出る中で、あくまで協議による解決を図りたいEUの慎重な姿勢があるとみられる。

このほか、欧州委は、44億ユーロ規模の特定の鉄スクラップおよび化学製品(対象品目は欧州委ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照)に関し、米国への輸出制限も検討しており、こちらもパブリックコンサルテーションを実施する。また、相互関税および自動車・同部品に対する追加関税につき、WTO紛争解決手続きに基づく協議を要請する方針であることも明らかにした。

(吉沼啓介)

(EU、米国)

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