英政府、インドとのFTAに合意、関税を削減、調達へのアクセスなど確保
(英国、インド)
ロンドン発
2025年05月07日
英国政府は5月6日、インドとの自由貿易協定(FTA)に合意したことを発表した。両国間のFTA交渉は英国のEU離脱後の2022年1月に開始し、3年超の交渉を経て合意に至った(2022年1月18日記事参照)。
英国からインドへの輸出に関しては、関税分類品目(タリフライン)の9割にあたる品目の関税削減を獲得し、そのうち85%は発効から10年以内に関税が撤廃されるとしている。ウイスキーとジンについては、現状の150%から発効時に75%に引き下げ、10年目までに40%まで引き下げられるとしている。また、自動車に対する関税についても割当の枠内の分に対しては現在の100%超から10%へと関税率を引き下げる。このほか、化粧品や航空、羊肉、医療機器、サーモン、電気機械、ソフトドリンクやチョコレート、ビスケットなどが恩恵を受けるとしている。インドからの輸入については、衣類や履物、食品が関税削減の対象となるとした。
関税以外の部分では、手続きの改善による通関の円滑化や、電子契約や電子取引といったデジタル化に向けた取り組みを進めることで合意。さらに、インドの公共調達へのアクセス改善についても確保。政府はこれにより、輸送やヘルスケア、ライフサイエンス、グリーンエネルギーなど幅広い分野で市場機会が拡大するとしている。また、インド政府が進める製造業振興策「メーク・イン・インディア」のもと、公共調達においてインド国内で製造・生産するサプライヤーが優遇されているが、英国の製品やサービスが最低20%含まれている場合にも「クラス2」の現地サプライヤーとしてみなされるようになり、一部公共調達へのアクセスが与えられるとされている。
このほか、同FTAには社会保障に関する内容も盛り込まれる予定。インド政府の発表では、インド人労働者が一時的に英国に派遣される場合、3年間は英国の社会保険料の納付を免除されるとしている。
ロイター(5月6日付)によれば、インド政府が求めていた英国の炭素国境調整メカニズム(CBAM)の免除については、今回の発表で言及はなかった。
英国のキア・スターマー首相はインドのナレンドラ・モディ首相と電話会談し、合意を歓迎した。その上で、発効に向けたさらなる取り組みを加速させる必要があると続けた。英国商業会議所(BCC)、英国産業連盟(CBI)、英国経営者協会(IoD)は、いずれも国際的な通商政策の不確実性が高まる中での両国間の合意に対し歓迎の意を示している。
(山田恭之)
(英国、インド)
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