AIを活用し、投資プロジェクトのボトルネックを特定

(チリ)

調査部米州課

2025年05月22日

チリの製造業振興協会(SOFOFA)は5月20日、人工知能(AI)を活用したデジタルプラットフォーム「プリスマ(Prisma)」のローンチイベントを開催した。イベントには、ニコラス・グラウ経済・振興・観光相や上院議員のロホ・エドワーズ氏が参加し、プリスマによって解析されたチリの投資プロジェクトに関するデータを参照し、ディスカッションを行った。今回プリスマによって、1992年以降にチリの環境評価システム(SEIA)へ提出された約3万件のプロジェクトが解析され、提出年、場所、分野、金額規模、進捗状況などの情報がマッピング、グラフ化された上で公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。

チリは、過去から国内への投資誘致に積極的な国として知られるが、環境アセスメントを含む許認可手続きが煩雑で、完了までに長期間を要するという課題を抱えている。プロジェクトの規模によっては、申請から完了までに3~4年を要するケースもあるという(2024年10月25日付地域・分析レポート参照)。チリ政府は、環境保全のために投資家に課す基準を今後も引き下げるつもりはないとの意向を示しているが(2025年5月16日記事参照)、まずは情報の透明性と利便性を高め、その後の手続きの簡素化などの議論につなげたい狙いがあるとみられる。

プリスマが解析したデータによれば、登録されている2万4,034件のプロジェクトのうち、現時点で491件の評価プロセスが進行中(En calificación)であり、投資総額は979億1,200万ドル(2024年11月までのインフレ率による評価額)とされている。規模としては、1,000万ドル以上1億ドル未満の中規模プロジェクト(注1)が全体の4割を占め、分野としては、エネルギー(全体の34.8%)、不動産(同20.0%)、鉱業(同13.8%)の順で件数が多い。全体の9割超のプロジェクトは、2023年以降にSEIAへ提出されているが、最も古いものは提出年が2009年となっている。さらには、これらプロジェクトの実現によって、21万4,698人の雇用創出が試算されている。これは、チリ統計局(INE)が公表した最新の失業者数(注2)の約24%に相当する。

(注1)1,000万ドル未満が小規模、1,000万ドル以上1億ドル未満が中規模、1億ドル以上が大規模と分類されている。

(注2)2025年4月29日付で、2025年1~3月の失業者数は89万5,673人と発表された。

(佐藤竣平)

(チリ)

ビジネス短信 96de5c417a2571a4